特別養護老人ホームの入居待機者は約42万人。今回の規制緩和は、その解消策となるのだろうか。

 国は、要介護2以上の高齢者に対して特養やグループホーム、有料老人ホームなどの施設・居住系サービスの利用者数の割合を、37%以下にするという目標(参酌標準)を定め、サービス量に“歯止め”をかけてきた。巨額の財政負担を抑えたいからだ。

 だが、厚生労働省は6月11日にこの規制を2012年度から撤廃すると表明。「施設に対するニーズが非常に高まり、地方自治体が自由度を持った判断ができるように決めた」(長妻昭厚労大臣)という。

 今後の焦点は、施設不足が叫ばれる首都圏と近畿圏での施設整備にある。両地域共に、施設・居住系サービスの利用者数の割合(昨年3月時点)は、都府県の多くが30%台前半だ。さらに、今後は急速な高齢化が進む。東京都の65歳以上の人口は、05年から20年にかけて101万人以上も急増する見込みだ。

 規制緩和の効果について、東京23区内からは「絵に描いた餅」と、施設の増加に疑問の声が上がる。「都内は、土地も人件費も高く収支が厳しいが、介護報酬には反映されない」。施設が増えても介護給付費の25%を支出する「都道府県と市区町村の負担と、保険料が増大する」問題も大きい。

 有料老人ホームの利用が一定の所得層に限られるなか、都は低額な軽費老人ホームへの補助金制度も打ち出した。だが、すでに「利用者の重度化で特養への待機組が増えた」自治体もある。

 財源問題の解消なくして、受け皿となる施設の増加は望めないが、打開策はいまだ見えない。

(「週刊ダイヤモンド」委嘱記者 内村 敬)

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