「社外の人」の言葉の力を借りる
ビジョンや会社の方向性を伝える際の一種のテクニックとして、外部の人間の力を借りるという方法も考えられます。
身内が身内に向かって「私たちの仕事にはこんなすばらしい意義があるのだ」と語るだけでは、どうしても説得力に欠ける部分があります。そこで、あえて外部の人に「あなたたちの仕事って、こんな社会的な意味があるんですよ」と伝えてもらうわけです。
大手金融機関の子会社になったある消費者金融会社の話です。
親会社の金融機関からやってきた新社長さんは、着任早々、社員それぞれに「仕事についてどう考えているか」についてレポートを書いてもらいました。
するとそこには、社員たちが仕事に対して抱えていた負い目や引け目が綴られており、新社長は「みんなが自信を持って働ける職場をつくりたい」と心底思ったそうです。
しかし、社長がいくら、消費者金融の社会的意義を語ったところで、社員たちに広がっていた空気が容易に変わることはありませんでした。当時、世間では、消費者金融がバッシングの渦中にあり、消費者金融をヤミ金と同列に扱うようなメディア報道も蔓延っていたからです。
そこで社長は、外部の有識者の方々を会社に招くようにしました。そして、社員の前で有識者と対話したり、社員たちと有識者の方々との対話会を開いたりしました。「消費者金融の社会的意義」についても彼らに語ってもらい、社員が自分たちの仕事について考え直すための機会をつくったのです。
その結果、社員たちは徐々に自信を取り戻していき、「この仕事を通じて自分のキャリアを築いていこう」という意識が生まれていったといいます。
組織やチームのビジョンに共感するのは、内部のメンバーだけではありません。外部の人間もビジョンに共感します。
ですから、自分たちのビジョンに共感してくれる外部の人がいたならば、積極的にメンバーと交流してもらうといいでしょう。
社外の第三者が、自分たちの組織のビジョンについて語ってくれる言葉は、思った以上にメンバーたちの心に届くものなのです。