1000人以上の経営者へのインタビューを15年にわたって続け、発売からわずか数日で重版が決まった最新刊『最高のリーダーは何もしない』を上梓した藤沢久美氏。
リーダーは「考え抜いたビジョン」をメンバーにどう浸透させればいいのだろうか?
藤沢氏は、意外にも「同じ釜の飯」「寝食を共にする」といった昔ながらの行動が効果的という。その真意とは?
腑に落ちるまで
「質問」をぶつけてもらう
ビジョンを浸透させるために、メンバーからの質問を徹底的に受けるという方法をとった企業リーダーがいます。
インターネットを使った市場調査などで知られる株式会社マクロミル(本社 東京都)の創業者の杉本哲哉さんは、会社を改革する必要に迫られた際、「夕方6時以降は社長室を開放する」という取り組みを1年以上続けたそうです。
当時社長だった杉本さんは「何でも聞きにきてほしい。全部答える。納得するまでつき合う」と社員に約束し、実際、深夜12時近くまで質問に答えた日も少なくなかったとか……。それだけメンバーも聞きたいことがたくさんあったし、社長もメンバーに真摯に向き合ったということでしょう。
ビジョンや会社の方針について質問を受け続けるというのは、想像以上に大変なことです。いくらいろいろな質問を想定していても、なかなか容易に答えられないものもあるでしょうし、社長に聞く必要もないような些細な質問もあるかもしれません。それでも、どんな質問にも粘り強く答えていかなければなりません。
そもそも人は話を聞いただけではなかなか納得できないものです。徹底的に質疑応答を繰り返していれば、感情的な応酬に発展することもあるでしょうし、時には語気を荒げるような場面も出てくるかもしれません。
しかし、それが互いの心の奥深くで触れ合う機会となり、ビジョンへの共感度が高まることも十分あるのです。