1000人以上の経営者へのインタビューを15年近く続けてきた藤沢久美氏の最新刊、『最高のリーダーは何もしない』。
リーダーが決めることのほとんどのことに正解はない、という藤沢氏。正解かどうか分からない決断をどう伝え、浸透させればいいのか。メンバーが納得する「説明」の仕方とは?
正解がない世界では、
「納得感」がすべて
司馬遼太郎さんの長編歴史小説『坂の上の雲』のなかで、とても印象に残っているシーンがあります。
主人公が軍艦の自室で次なる戦略を決断するシーンです。ベッドに横たわり天井を見つめながら、「戦略は直感で決めたが、『なぜそう決めたか』を隊員たちにどう説明するか、考える時間が必要だ」といったことを呟きます。
直感が当たるか当たらないかはわかりません。
しかし、最も重要なのは、リーダーが決断しなくてはいけないことのほとんどに「正解」がないということです。
成功するかしないかは誰にもわからないからこそ、リーダーとしては現場が納得できる「説明」をしなければなりません。
決断に至ったプロセスを論理化して伝え、迷わず走り出せるようにメンバーの心を整えることが必要です。
ブータン王国は、現在の5代目国王の父である4代目国王ジグミ・シンゲ・ワンチュクによって民主化されました。
前国王は民主化の際に、ブータンの全国を行脚したといいます。自動車が入れない山奥の村では、途中で車を降りて歩き、「ブータンを民主化する」という大きな決断について、国民に説明して回りました。