社長の肩書きを利用し、「過去最高益」を達成

 私の「かばん持ち」をした井辻食産株式会社(食品業/広島県)の井辻龍介社長は、営業をしない典型的な3代目でした。

 そこで私は、井辻社長にこう言いました。
「業績の悪い会社の社長は、『社長の仕事は、決裁すること』だと考えている。これは間違いです。もちろん『決裁』も大切な仕事だけれど、それ以上に大切なのは、トップ営業をすることです」

 そして、私の言うとおりトップ営業に励むようになり、5700万円という過去最高益を出したのです。

「会社の業績をよくするには、お客様の数を増やさなければいけません。そのためには、トップ営業をすることが大切なのだと、改めて実感しています。私どもの営業先は、主にスーパーのバイヤーさんや商社ですけど、『エッ、社長さんですか? 社長さんがお見えになる会社は井辻さんのところだけですよ』と言って、喜ばれますね」(井辻社長)

 また、社長が営業に行くと、一担当者ではなく、役職者に取り次いでもらえることがあります。「わざわざ社長がお見えになったのだから、こちらも役職者でないと失礼に当たる」と思うのでしょう。

 一般社員に営業しても、その人に決裁権がなければ、先は長い。でも、役職者はたいてい決裁権を持っているので、回り道をせずに商談を進めることができます。

<著者プロフィール>
小山 昇
(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。東京経済大学を卒業し、日本サービスマーチャンダイザー株式会社(現在の株式会社武蔵野)に入社。一時期、独立して株式会社ベリーを経営していたが、1987年に株式会社武蔵野に復帰。1989年より社長に就任して現在に至る。「大卒は2人だけ、それなりの人材しか集まらなかった落ちこぼれ集団」を毎年増収増益の優良企業に育てる。2001年から同社の経営のしくみを紹介する「経営サポート事業」を展開。現在、600社以上の会員企業を指導しているほか、「実践経営塾」「実践幹部塾」「経営計画書セミナー」など、全国各地で年間240回以上の講演・セミナーを開催。1999年「電子メッセージング協議会会長賞」、2001年度「経済産業大臣賞」、2004年度、経済産業省が推進する「IT経営百選最優秀賞」をそれぞれ受賞。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。
2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。
『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』『強い会社の教科書』(以上、ダイヤモンド社)、『99%の社長が知らない銀行とお金の話』『無担保で16億円借りる小山昇の“実践”銀行交渉術』(以上、あさ出版)、『【増補改訂版】仕事ができる人の心得』(CCCメディアハウス)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】
http://www.m-keiei.jp/