
新卒社会人向けメディア『フレッシャーズ・コース2027』(*1)第3巻のテーマは「コミュニケーション」。その中で、龍谷大学・副学長の村田和代教授(政策学部)は、「コミュニケーションといえば、とかく、発信する方法に意識が向きがちですが、自分本位でしゃべるのではなく、“コミュニケーションは他者との相互行為”ということを忘れないようにしたい」とメッセージしている。若年層とのコミュニケーションがうまくいかず、言いっ放し、聞きっ放しの上司や先輩社員も多い職場で、アンコンシャス・バイアスやジェネレーション・ギャップを減らして、円滑な対人関係を培う方法とは? ビジネスパーソンの必読書『優しいコミュニケーション――「思いやり」の言語学』(*2)の著者としても知られる村田教授に、「HRオンライン」が話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)
*1 ダイヤモンド社『フレッシャーズ・コース2027』
*2 岩波書店『優しいコミュニケーション――思いやりの「言語学」』
コスパ、タイパを重視する学生と向き合いながら
龍谷大学の副学長で、社会言語学者の村田先生(政策学部教授)は、常日頃、分け隔てのないコミュニケーションで学生たちに親しまれ、学ぶことのワクワク感をキャンパスにもたらしている。教え子に、「和代先生」……ときには、「和代さん」と呼ばれることもある村田先生だが、近頃の学生たちをどう見ているのだろう?
村田 よく言われるように、最近の学生さんは、タイパ、コスパをとても気にしますね。みんながみんなというわけではありませんが、人情、義理、恩義といった情緒的なものより、合理的なことを重視する傾向にあるようです。その理由は、世の中があまりにも便利になったからではないでしょうか。たとえば、私たち「テレビ世代」は、“番組時間に合わせての生活”がありました。「今夜は7時から□□を見たいから、それまでに帰って……」というふうに。でも、最近の学生は、自分の好きな時間に、別のメディアやオンデマンドの配信を見たりします。テレビに限らず、何かに自分の時間を合わせることが減っているのです。私は劇場での映画観賞が好きなのですが、「映画館に行く意味がわからない」と学生に言われたことがあります。「本編が終わって、エンドロールが流れているときの余韻が好き」と私が言ったら、「時間がもったいなくないですか? 僕は、映画の結末を調べてから本編を観ます」と。

村田和代 Kazuyo MURATA
龍谷大学 副学長/政策学部教授
奈良県橿原市生まれ。ニュージーランド国立ヴィクトリア大学大学院言語学科Ph.D.(言語学)。専門は社会言語学(コミュニケーション研究)。2012年、龍谷大学政策学部教授、2025年、龍谷大学副学長に就任。著書に『優しいコミュニケーション―― 「思いやり」の言語学』(岩波書店)、編著に『シリーズ 話し合い学をつくる(全3巻)』『聞き手行動のコミュニケーション学』(共にひつじ書房)などがある。新卒社会人向けメディア『フレッシャーズ・コース2027』(ダイヤモンド社)の「Message to Freshers 働き始めるあなたへのメッセージ」コーナーにも出演している。
コスパ、タイパを重視する学生たちが、毎春、フレッシャーズとして社会に飛び立っていく。村田先生が、彼ら彼女たちに伝えていること、伝えたいことは何か?
村田 「無駄」と思うことの中にも、大切なものがあることを伝えたいです。「こんなことをやって、何になるの?」「無駄をなくしてしまおう!」と思いがちですが、勉強や仕事での経験に「無駄」はほとんどありません。私自身のキャリアを振り返っても、20代でしんどかった時期がたくさんあったけど、得るものも多くありました。「あの時間はしんどかったなぁ」「あの頃の自分は一生懸命がんばっていたなぁ」と振り返ったときに、意外な達成感や周りの人たちの恩に気づいたりします。
それから、社会に出る学生には、真心や誠実であることの大切さを知ってほしいですね。会社が嫌になって辞めるときに、嫌になった理由を伝えずに代行業を使ったりもする時代ですが、組織に何らかの迷惑をかけたときには、自分の口できちんと謝ること、何かをやってもらったときには、しっかりお礼を言うこと――そういう当たり前の姿勢が、人と人のコミュニケーションにおいて必要だと思います。








