「肉なら脂質の少ない赤身だけ」など細かい指定がされているならまだしも、なんでも食べていいということになれば、「動物性の脂質もどんどん摂っていい」ということになり、結果として死亡リスクを高めてしまうのだ。こうした過度な糖質制限ダイエットについての否定的な声は、医学界でも上がっているという。

「日本の糖尿病学会では、糖尿病患者以外の健康な人が糖質制限を行なうと、かなりリスクがあると発表していますし、アメリカ国立衛生研究所(NIH)では、低炭水化物食は、死亡率を1.12倍高めるという発表がされています。

 また、英国の医学雑誌『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』でも、4万3396人の女性の食生活を対象とした16年間の追跡調査の結果、炭水化物を制限する食事を長期間続けると心筋梗塞や脳卒中になる危険性が最大1.6倍まで高まる、という発表を2012年にしています」

 ちなみに厚生労働省が推奨している、エネルギーを産生する三大栄養素の理想的なバランスを示す「PFC摂取バランス」は、炭水化物60%、脂質25%、タンパク質15%だという。これは昔から日本人の食事の摂り方とされる「一汁三菜(ご飯に汁もの、おかず3種)」に則った数値であり、日本人が世界的に見ても長寿国であるのは、この一汁三菜のおかげとも言われている。

 その点、極端な糖質制限のように基本的に炭水化物を摂らない食生活だと、前述の理想的なバランスは完全に崩壊。脂質とタンパク質のみですべてのエネルギーを補うことになるわけで、これがいかに過激な試みかは言うまでもない。

糖質制限は短期間限定で
専門家に相談しながら臨むべき

 ただし日比野氏は、糖質制限自体が絶対にダメということではなく、「大事なのは食事のバランス」だと何度も強調した。

 たとえば、炭水化物と一口に言っても、その中には米やパン、麺類だけではなく、豆類や穀類も含まれる。肉ばかりに偏りがちな糖質制限では、豆類に豊富なビタミンやミネラル、根菜類、穀類、果物類に多く含まれる食物繊維など、肉だけではどうしても摂れないものがある。これらをバランス良く摂ることが、人間の食生活においては何より大切なのだ。