日本円の札束を持つ人の手元写真はイメージです Photo:PIXTA

同じように社会的な意義を持つ事業であっても、ある人は莫大な支援を集めて成功する一方で、別の人は資金繰りに行き詰まり、夢を断念してしまうことがある。その違いを生むのは、構想そのものより、「非営利団体の壁」だった――。世界中で講演会を主催する非営利団体「TED」を率いる筆者が、自身の経験をもとに語る“資金集めの極意”とは何か。※本稿は、TED代表のクリス・アンダーソン著、北村陽子訳『利他はこうして伝染する――小さな1歩を大きなうねりに変え、優しさが活きる世界をつくる』(英治出版)の一部を抜粋・編集したものです。

世界を席巻するかもしれない
構想を持つ2人の起業家

 マーカスを紹介しよう。熱意にあふれた若い起業家で、実績は証明済みであり、アプリをベースにしたすばらしくイノベーティブなサービスの構想を持っている。世界中の人たちに響く可能性のあるものだ。

 マーカスは、自分のアイデアをベンチャー・キャピタリストに提示し、3ラウンドにわたる資金提供で総額2500万ドルの支援を得た(数十人の初期投資家からの資金をプールする基金を活用)。

 3年後に会社の株式を公開して、数千人の新たな投資家から、わずか1日でさらに7500万ドルを集め、その2年後には、顧客は全世界で3000万人に達した。

 顧客は、マーカスのヘブンリーピザのアプリで、ドローンを空から呼び出して配達してもらう。マーカスは億万長者になり、会社の投資家や株主は大成功した。

 だが、世界が必要とするすべてが利益の上がる製品になれるわけではない。

 同じ街の3ブロック先にマヤが住んでいる。彼女も熱意にあふれた若い起業家で、実績は証明済みであり、世界中の人たちに響く可能性のある、アプリベースのすばらしくイノベーティブなサービスの構想を持っている。