名古屋で開催されていた生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)は、生態系保全目標を定めた「愛知ターゲット」と、生物資源の利用による利益配分の枠組みを定めた「名古屋議定書」を採択し、閉幕しました。昨年、コペンハーゲン(デンマーク)で開催された、気候変動枠組み締約国会議(COP15)が、大きな期待を集めながらも、国際的な合意が得られなかったことを考えれば、この結果は前向きに評価してもよいと思います。
しかし、前回も書いた通り、国際的な環境問題の議論が、ビジネスに代表される経済問題を背景にした「先進国」vs「途上国、新興国」という図式である以上、今後も利害の対立が続くことは否めません。今回のCOP10で日本政府は、難航する協議の行き詰まり打開策として、開発途上国の生物多様性保全に対する新たな資金支援を示すなど、「援助」という方法で対応しようとしています。
しかし、途上国の問題は「援助」だけで解決することはできないのです。
10月29日から11月2日の5日間、私はバングラデシュを訪問してきました。バングラデシュ訪問は、今年の3月に続き2度目でしたが、前回は、立教大学のプロジェクトで提携関係にあるグラミン銀行や世界最大のNGOと言われるBRACなど「非営利セクターとの面談」が主目的だったのに対し、今回は「ビジネスセクターとの面談」が目的でした。
バングラデシュと聞くと、「アジア最大の貧困国」という枕詞や、2006年に貧困層向けに無担保、少額の融資(マイクロクレジット)を行ない、ノーベル平和賞を受賞した「グラミン銀行」「ムハマド・ユヌス総裁」などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。このようなイメージから、われわれはとかく「バングラデシュ=途上国=支援対象国」として捉えがちです。
しかし、バングラデシュは過去5年間(2004年から2008年)平均6.2%の経済成長を遂げており、2008年の実質経済成長率5.64%は、インドの5.68%に次ぎ世界21位にランクされるものです。また、ゴールドマン・サックス社が、BRICsに続く、新興経済国「ネクスト11」の1つにあげるなど、バングラデシュは今後も経済的成長が見込まれている国なのです。