シリコンバレーへ向けられる視線が熱い。イノベーションの種と成長を求め、進出する日本企業数も過去最高を更新した。しかし、シリコンバレーが100人の村だとしたら、日本人はわずか1人の少数派だ。 Think Locally, Act Globallyの世界で、ローカルの外国人の輪に日本企業の存在感は小さい。イノベーションに立ち向かうため、シリコンバレーと日本で共有すべき考え方とは。

イノベーションの戦場で感じる
日本の存在感の希薄さ

 米国の西海岸に位置するシリコンバレーは、Apple、Google、Uberなど、イノベーションを生み出し続ける地域として有名である。千葉県ほどの面積だが、全米のベンチャー投資額590億ドル(約6.5兆円、2015年)のうち、実に46%がここに集まっている(1)

スタンフォード大学の展望台から一望するシリコンバレーの街並み

 日本のベンチャーキャピタルによる投資額は年間1000~2000億円だから、シリコンバレーだけで日本の20倍以上の規模だ(2)。成功を目指し、今も世界中から人が集まってくる場所である。

 日本企業の進出は増加しており、2014年には719社と過去最多となったことが話題になった(3)。2015年4月には安倍首相が歴代首相として初めて訪問したことも記憶に新しい。

 しかし、そんなシリコンバレーで自社にイノベーションをもたらすべく派遣された日本企業の社員が直面するのは、想像を超える日本の存在感の希薄さだ。生活面でみれば、街中にすしやラーメンのお店は多いし、日本車も走っている。しかしイノベーションという文脈において、その様相は全く異なる。

 シリコンバレーといっても多くの地域は都会というより田舎だ。高層ビルは少なく緑が多い。鹿やアライグマなどの動物もいる。ところがしばらく滞在すると、ここにはまだ先に思えた未来が身近に実現されていることに気づく。

 Googleの自動運転車は普通に街を走っているし、一番評価の高い車は電気自動車のTESLA(4)。病気の際には携帯アプリで医師とやりとりでき、土日でも薬局で薬を受け取れる。そんな次々と起こるイノベーションの競争にいざ自分が入っていこうとしたとき、シリコンバレーは近未来の田舎町から、厳しい戦場へと姿を変える。