震災が「夫婦の絆」を見つめ直すきっかけに

 未曾有の被害をもたらした東日本大震災から先週金曜(3月11日)でちょうど5年をむかえましたね。午後2時46分には、あなたも黙祷を捧げたと思いますが、どんなことが頭に浮かんだでしょうか?私が真っ先に思い浮かんだのは「もしも震災が起こらなければ、きっと離婚しなかっただろう男性相談者の顔」です。

 なぜなら、過去に経験したことがない危機に遭遇し、「夫婦だから」という大義名分もあるにもかかわらず、助け合おうとしない夫と妻が私の目の前に多数、現れたのですから。震災から5年の間で、私のところに急増したのは、人生の再出発を図ろうとする男性たちです。「これからの人生、妻と一緒にやっていくか、それとも……」と。世の夫たちの一部は今さらながら、人生とは限りあるものだと気づき、震災をきっかけに離婚を考え始めたようです。

 ところで震災を境に180度、変わってしまった職業があります。それは今回紹介する東京電力の社員、大学の理学部の教員、そして消防士の3つです。世間の評価や評判、信用や信頼、そして年収まで……さまざまなことが一夜にして一変してしまいました。

 例えば、震災前まで東京電力は最も安定した企業の1つでしたが、震災後は被災者への賠償や廃炉費用、そして電力の自由化で不安定極まりない企業になってしまいました。次に大学の理学部で教鞭をとっていれば、震災前までは誰もが「すごいですね」と褒め称えてくれたのに、震災後は「原子力工学?なんだか胡散臭い」と後ろ指を差される有様になってしまいました。一方で消防士はどうでしょうか?震災前までは3K(汚い、きつい、怖い)の象徴でしたが、震災後は被災地で危険な任務に当たる消防士たちの姿がクローズアップされたことで「かっこいいなぁ」「頼りになるよ」「たくましいわ」と評価はうなぎのぼりです。

 このように震災をきっかけにして世間の3人への評価は、まるで今年の日本の株式市場のように乱高下したのですが、このような手の平返しは、彼らの「家族」にどのような影響を与えたのでしょうか?

 今回取り上げるのは「福島第1原発に駆り出された東電社員」「理学部で教鞭をとっている大学の教員」「震災バブルでヒーロー扱いされた消防士」の3名ですが、彼らは人生を大きく狂わせられ、天国から地獄へ真っ逆さまに転げ落ちたのです。それでは3名の「震災離婚」の体験談を聞いてみましょう。

原発対応で休日返上の東電社員
大幅減給で『ダメ亭主』扱い

「休日返上でも出勤しても大幅減給……それなのに『ダメ亭主』扱いされるなんで酷すぎませんか?」