トランスナショナル型のもう一つの要件は、世界中から競争優位の源泉を獲得しグローバル展開することだが、ここでもCFOが果たすべき役割は大きい。

 トランスナショナル型の企業は、機能HQ(COE)が世界各地に分散しつつも、全体としては、あたかも一つの企業体のように振る舞うことに大きな特徴がある。誤解を恐れずに言えば、国内に閉じた企業の経営モデルを、そのままグローバルで実現している、ともいえる。

 たとえば、国内市場だけを対象に即席めんを製造・販売する企業を考えてみよう。関東風、関西風など地域ニーズに即した製品を提供する一方、仕入れや製造、販売などのサプライチェーンは全国規模で効率性を追求している。さらには特定地域で好まれている一風変わったラーメンを発掘し、ご当地ラーメンとして全国展開する。こうした取り組みはドメスティック企業で行われていることだが、トランスナショナル型のグローバル企業は、世界規模で同様の取り組みを実現している。

 もちろん、相手が世界となれば、多様性や複雑性のレベルは格段に高まる。言語や文化、商習慣などが異なる地域の市場ニーズに対応しつつ、全体として高い効率性を実現するのは容易ではない。さらに競争優位の源泉を求めてCOEが世界各地に分散するため、そのトップであるCxOの国籍も多岐にわたるだろう。ともすれば、グループ全体が機能で分断されバラバラになりかねないリスクを負う。

 したがって、トランスナショナル型におけるグローバルCFOは、世界中に散らばったCOEおよびそのトップであるCxOを同じ戦略にアラインさせるために、強力なリーダーシップを発揮しなければならない。そのためには、計数情報に基づく客観的な分析力や、機能CFOを通じてCxOたちを束ねるコミュニケーション力はもちろんのこと、市場や競合の動向を踏まえた自社の競争優位の組み替え、イノベーション源泉地のトレンド把握とCOEの最適立地など、幅広い知見や深い洞察力が求められる。

真のグローバルCFOの役割

 グローバル管理モデルは図表3「グローバル管理モデルの3層構造」で示すように、組織層、業務層、リソース層で構成される。

<small>グローバル経営モデル最適化のナビゲーターとして</small><br />グローバルCFOの条件

 

 このうち組織層については、本稿で述べた4類型の経営モデルが該当する。

 大切なことは、選択した経営モデル(組織層)と整合するように、業務層およびリソース層を変革することである。そうしなければ、経営モデルは有効に機能しない。

 図表3に示すように、3層全体の変革は全社的な一大プロジェクトである。CFOが音頭を取って人事、情報システムなどの関連部門を巻き込まなければ、変革は進まない。

 ここまで述べてきたように、どのような経営モデルにおいても、グローバルCFOには以前にも増して高度なマネジメント能力が求められるようになった。自社の事業構造や競合・業界の動向に留まらず幅広く深い知識と洞察力を持って、配下の地域CFO、機能CFOを束ねつつ、CEOの参謀またはパートナーとして組織を運営しなければならない。

 さらには、経営モデル自体の選択や、それに合わせた3層の管理モデルの変革についても、グローバルCFOには強力なリーダーシップが期待される。

 このようにグローバルCFOの要件を列挙すると、「スーパーマンを求められても困る」という声が聞こえてきそうだ。しかし、人数は限られるかもしれないが、世界には「スーパーCFO」と呼ぶに値する人物が存在していることも事実である。今後、日本企業が強大なグローバル・コンペティターと競争するに当たり、欧米の先進企業に見られるような「スーパーCFO」を計画的・意識的に育成することは急務の課題であろう。

注)C. A. Bartlett and S. Ghoshal, Managing Across Borders: The Transnational Solution, Harvard Business School Press, 1989.(邦訳『地球市場時代の企業戦略――トランスナショナル・マネジメントの構築』日本経済新聞社、1990年)

(構成・まとめ/津田浩司)