倒産動向にも影響を及ぼす制度変更が迫っている。首都圏にある税理士会幹部は「8月から駆け込みの清算が増えるだろう」と言う。税理士向けのセミナーが相次ぎ開催され、制度変更の影響を測る依頼も増えている。

 今年度の税制改正を受け、10月1日から、会社を清算するときの課税制度が変わる。「清算所得課税」が廃止され、通常の所得課税方式に移る。それまでになかった法人税を支払うことになる。要は、清算時の税負担が増すわけだ。

 詳細は次のようになる。

 会社を清算するときは、主に株主総会で解散を決め、事業を停止。債務や債権の整理を行った後、残った財産に課税され、余りを株主らで分けた。債務超過でも不動産などを売ることで含み益が出れば、手元に現金を残せた。

 しかし、これからは、益金(利益)から損金(費用)を引いたぶんに課税される。清算中でも、不動産の売却や債務免除を受けると利益と見なされる。つまり、残った資産ではなく、儲けたぶんが課税対象になるのだ。

 清算対象となる会社は少なくない。帝国データバンクによると、2009年度の「休廃業・解散」の件数は2万7191件に上る。

 ただし、特例がある。青色申告書で提出した欠損金に加え、それより前の欠損金(期限切れ欠損金)も損金扱いできる。債務免除の利益などを欠損金で相殺でき、課税を免れる場合もある。

 しかし、こうした特例に該当しなければ、現在の制度よりも、税額が多くなる場合が出てくる。銀行対策に決算を“化粧”していた会社はもちろんだ。

 事務手続きの煩雑さも予想される。サンセリテ会計事務所の奥秋慎祐所長は「準備に1~2ヵ月は必要で、今、相談したほうがよい」と話す。駆け込み清算が始まりそうだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)

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