鉄道会社といえば、乗客を運ぶ鉄道事業や、旅行事業などが本業。しかし、国内最大の鉄道会社JR東日本は、中堅の百貨店に匹敵するほどまでに流通事業を拡大させている。(「週刊ダイヤモンド」編集部 清水量介)
東日本旅客鉄道(JR東日本)本社のまさに目と鼻の先であるJR新宿駅新南口に2月26日、地上33階、地下2階建ての巨大な複合ビル「JR新宿ミライナタワー」が開業した。
同時に、JR東日本のグループ会社、ルミネが運営する「ニュウマン(NEWoMan)」もオープン。ミライナタワーの1~4階と、JR各線の乗り場の上にまたがる商業施設で、その名の通り、30代後半から40代の「大人の女性」を主なターゲットとしており、これまでのルミネとは趣が大きく違う。
約100店のショップや飲食店のうち、半分以上が日本初出店や新業態の店とあって、この日はオープン前から多くの客が長蛇の列をつくり、午前11時の開店と同時になだれ込んでいった。
ここ最近、JR各社は、駅という好立地のインフラに目を付け、大型複合ビルを建設するなど再開発に積極的だ。百貨店をはじめとする商業施設やオフィスを誘致し、乗降客に対するサービスの向上を図るとともに、テナントから不動産収入を得る戦略だ。
しかし、JR東日本は他のJR各社とは一線を画し、自ら商業施設を開発し、運営している。ルミネやニューデイズなど、ファッションビルから飲食店、コンビニエンスストアに至るまで業態も幅広く、流通業界でも恐れられる一大プレーヤーとなっている。
JR東日本がこうした戦略に打って出られるのも、鉄道事業の安定性と高い収益性に支えられているからこそだ。
乗客の多さ背景に高収益体質を維持
成長戦略にも布石
JR東日本は、言わずもがなだが、国内の鉄道会社の中で最大規模の売上高を計上している。その額は、2兆8410億円(2015年度)。2位の東海旅客鉄道(JR東海)の売上高が1兆6722億円(同)だから、1兆円以上も差をつけているのだ(図(1))。
リーマンショック後の09~11年度こそ2兆5000億円台に下がったものの、ここ20年間ほどで見ても、前年より大きく減少することはまれで、微増、悪くても横ばいを続けてきた。