トランプとゴルバチョフには
意外な共通点があった

「わが国は世界中を支援しすぎだ。われわれには、そんな余裕はない。自国のことを第一に考えなければならない」。トランプがこう考えているのは明らかだ。

 ところで、過去にも同じことを考えた男がいた。ソ連最初で最後の大統領ゴルバチョフである。ソ連経済は1970年代、原油価格の高騰で、非常に好調だった。ところが、80年代になると原油価格は低迷し、ソ連経済はボロボロになっていく。

 ゴルバチョフは、考えた。「ソ連は、東欧の共産国家群をはじめ、アフリカ、アジア、中南米、つまり全世界の共産国家を支援している。われわれには、今までのような支援をつづける余裕はない」。そして彼は、実際に世界の共産国家への支援を減らしはじめた。

 さらに、「自国第一主義」が高じ、「東欧の政治には不介入」という方針に転換する。その結果何が起こったか?

 1989年、ベルリンの壁が崩れ、ドミノ式に東欧民主革命が広がった。
 1990年、資本主義の西ドイツと共産主義の東ドイツが統一した。
 1991年末、ソ連自体が崩壊し、15の独立国家が誕生した。

 ゴルバチョフの決断は、冷戦を終わらせ、日本の脅威を消滅させた。それはありがたいことだが、旧ソ連人にとっては、「国を滅ぼした指導者」である。トランプの考えていることは、そんなゴルバチョフと同じなのだ。

 もう一度復習しておこう。トランプの認識は、「米国は貧しい債務国で、世界中の国々から搾取されている」ということ。それで、「日本、韓国、NATO加盟国、サウジアラビア、アラブ諸国の負担を増やさせ、その分米国の支出を減らす。米国は、金のかかる軍事介入も減らす」。すでに見てきたように、これはソ連を滅ぼしたゴルバチョフと同じ方針で、米国の覇権を終わらせる道である。

 なぜか? 覇権とはなんだろう? 辞書を見ると、「覇者としての権力。力をもってする支配力」とある。「覇権国家」とは、簡単にいえば、「支配する国」という意味である。

 冷戦時代は、「資本主義陣営」の覇権国家・米国と、「共産主義陣営」の覇権国家・ソ連がいた。しかし、ソ連が崩壊したので、米国は世界唯一の覇権国家になった。ところで、「覇権国家」の「支配力」は、どのような方法で維持されるのだろうか? 昔のように、片っ端から「植民地」にして、支配するわけにもいかない。

 では、どうやって?

 1つは、「経済的支援」を通してである。既述のようにソ連は冷戦時代、世界中の共産国家、さらに資本主義国家内の共産勢力を支援していた。米国は90年代、ソ連崩壊でボロボロなった新生ロシアを経済支援することで、政治までコントロールしていた。要するに「金による支配」だ。

 これは一般人にも理解しやすいだろう。Aさんの会社の社長は、性格が最悪かもしれない。しかし、Aさんは、社長のいうことを聞いている。なぜか?毎月「給料」をもらっているからだ。そう、Aさんは、社長に「金で支配されている」のだ。

 もう1つの支配力の源泉は、「軍事力」と「安全保障」である。たとえば、EU全体の経済規模は、米国を凌駕している。しかし、米国はNATOを通して、欧州を実質支配している。とはいえ、「悪い米国が強制的に欧州を支配している」とも言い切れない。NATOは、「対ロシア」の「軍事同盟」だからだ。特に、ソ連時代共産圏にいた、つまりロシア(ソ連)に支配されていた東欧諸国は、NATOの存在を歓迎している。

 日本は、世界3位の経済大国である。しかし、日米安保で、米国に支配されている。これも二面性があり、日米安保のおかげで、日本はソ連に侵略されず、今は中国の脅威から守られている。