かつて、リーマンショックに端を発した金融危機において、“爆弾”となった金融商品に銀行が再び吸い寄せられ始めている。大損失のトラウマを背負ったはずの銀行は、なぜ同じような道を歩もうとしているのか。そして、再び同じ過ちを繰り返してしまうのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
映画界最大の祭典、米アカデミー賞授賞式。今年そこで脚色賞に輝いたのは、米国の住宅バブル崩壊からリーマンショックを含めた世界金融危機を題材にした、「マネー・ショート華麗なる大逆転」だ。
住宅バブルに酔う米国で、信用力の低い顧客への貸し出しであるサブプライム住宅ローンの問題を見抜き、世界経済破綻に賭けて大もうけした4組の男たちの物語だ。
10年近く前の世界金融危機が「マネー・ショート」の受賞によってあらためて脚光を浴びたわけだが、実は日本の銀行界でも、世界金融危機前夜を思い起こさせる事態が水面下で起きつつあった。
その銀行の動きを知る上で欠かせないのが、「マネー・ショート」でも鍵となる債務担保証券(CDO)とクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)という金融商品だ。
劇中でCDOは、腐った魚と新鮮な魚のごった煮シチューに例えられる。悪質なサブプライム住宅ローンを良質なものとごちゃ混ぜにして作った金融商品だからだ。一方、CDSは企業の倒産などに備える一種の保険で、保険料を払うと万が一のときに保険金を受け取れる仕組みだ。
劇中の主人公たちはCDSを使って、サブプライム住宅ローンにひも付いたCDOが破綻したときに、保険金を受け取れる契約を米投資銀行と結ぶ。そして、ウォール街を相手にした世紀の大勝負に勝ち、巨万の富を手に入れるのだ。
逆に、敗者となった米投資銀行は巨額の損失を計上。さらには、世界金融危機へと発展していく。
その当時、実は日本の銀行界にも同様のCDOが出回っていた。商品の中身もリスクもよく分からないまま、利益に目がくらんで買ったCDOの価値が暴落。銀行界は巨額の損失を被ったのだ。
そんなトラウマを背負ったはずの邦銀が、再び世界金融危機の“爆弾”に吸い寄せられている。今度はCDOではなくCDSだ。