市場への影響力が極端に低下
日欧の中央銀行の金融政策

足元の為替市場で円高傾向が進んでいる

 足元の為替市場で円高傾向が進んでいる。4月7日現在、1ドル=108円台に突入し、約1年5ヵ月ぶりの円高水準になっている。

 株式市場の投資家の間では、円高進行によって自動車などわが国の輸出企業の業績悪化を懸念する声が強まっており、わが国の株式市場において不安定な展開の最も重要なファクターの一つになっている。

 一方、円高とは反対にドル安が進行していることもあり、米国企業の業績回復への期待が盛り上がっている。それに伴い、米国株式市場はしっかりした展開を示している。為替市場の動向によって、日米両国の株式市場は対照的な動向を示している。

 今回の為替市場の動向で注目される要因の一つは、日欧の中央銀行によるマイナス金利にまで踏み込んだ金融政策の、為替市場への影響力が極端に低下したことだ。

 今年に入って、日銀・ECBともに一段の金融緩和策を実施した。以前であれば、円・ユーロの金利が低下することで、両通貨とも弱含みの展開になるケースが多かった。ところが、今回は円・ユーロともに基軸通貨ドルに対して強含みの展開になっているのだ。

 これは、最近の世界経済に先行き不透明な要因が増していることもあり、多くの投資家が単純に表面金利を見て、オペレーションを行うことがやりにくくなっていることが反映されている。

 つまり、投資家が表面金利だけ見てオペレーションを行っても、あまりにも経済情勢の変化が大きいため、リスクに見合ったリターンを上げにくくなっていることが背景にある。そのために、ヘッジファンドや為替ディーラーは、経常収支やインフレ率など経済の基本的条件を吟味する方向になっている。