席上、伊藤社外取締役が提案したのは「取締役会でこれまでやったことがなかった」(出席者)という無記名投票だった。

 15人の取締役の判断は割れた。賛成7、反対6、白票2。賛成が過半数の8票に満たず、井阪社長の交代案は否決された。

「反対票が社内の役員からも出るようならば、私が信任されていないという意味だと考えていた」(鈴木会長)。こうして、井阪社長の交代案が否決された取締役会の直後、鈴木会長は側近にあっさり引退を告げたのだった。

 鈴木会長の退任で、トップ不在という危機に陥ったセブン&アイHD。今後、巨大な組織を誰がコントロールしていくのか。複数の幹部の話を総合すれば、目下のところ考えられるのは、次の三つのシナリオである。

 第一の案は、セブン&アイHDのトップに井阪社長が昇格するというもの。セブン-イレブンを5期連続最高益にした実績は十分で、社外取締役からの評価は高い。そして、井阪社長の後任には、米セブン-イレブンに出向中の野田靜眞執行役員が有力視されている。

 野田氏は「加盟店を大事にしてくれる」とオーナーからの支持が厚い。また、米セブン-イレブンを再建した手腕には一定の評価がある。

 とはいえ、今までの事情をよく知る古屋副社長しかないのではとの見方もある。

 また、井阪社長は「セブン-イレブンでやるべきことはまだまだある」と周囲に語っており、セブン&アイHDのトップに立ち、グループ全体の経営に色気を示すかは不透明な部分もあるという。