「新築マンションのほうが20年間長く貸すことができる。その期間にキャッシュフローを多く得られる分、新築のほうがお得だ」というのが妹のロジックだ。

本当だろうか? ひとまず新築マンションの耐用年数は最低の50年で見積もってみよう。金利は6%と仮定してみる。

50年間のキャッシュフロー表をつくったら、それぞれの年のキャッシュフローを金利で割り引いて現在価値を出す。すでに見たとおり、1年後の300万円は約283万円、10年後の300万円は約168万円である。

最後に、これらの将来キャッシュフローの現在価値をすべて足し算しよう。
これがDCF法で導かれる正味現在価値だ。どうなるだろうか?

そう、この新築マンションの本当の価値は約4729万円だということになる。

では、あと30年しか貸し出せない中古マンションのほうはどうだろうか? 同じように計算してみると、驚くべきことにこちらにも4129万円の価値がある。

つまり、両方のマンションの価値の差は、たった600万円程度に過ぎない。妹は「新築のほうが6000万円ほど得だから、現金2000万円は自分がもらいたい」と言っていた。つまり、もしもあなたが妹の提案に乗っていたら、あなたが相続する資産の価値総額は4729万円、妹のほうは6129万円(=4129万円相当のマンション+現金2000万円)ということになる。とんでもないペテンだ。