あなたが2人の友人から「お金を貸してほしい」という相談を受けているとしよう。まじめでしっかり者のMくんと、いつもギャンブルで有り金をはたいてしまうNくんだ。

彼らがそれぞれ「1年後には必ず10万円にして返すから、今日いくらかお金を貸してほしい」と頼んできたとしよう。

あなたはどちらの友人も助けたいと思うだろうが、それぞれに貸し出すお金の額は違ってくるはずだ。

「Mくんはまじめだから、おそらく10万円は返してくれるだろう。だから9万円くらいを貸してあげてもいいかな」

「Nくんはギャンブル依存症だから、1年後本当に満額返してくれるかもかなり怪しい。いま貸すとしたら5万円がせいぜいだろう」

――こんな具合いである。

この場合、Mくんへの貸出は割引率11%(融資額9万円=10万円÷(1+0.11))、Nくんへの割引率は100%(融資額5万円=10万円÷(1+1))となる。

このように、ファイナンスにおける金利は、同時に割引率としての性格を持っている。

たとえば「1年後の100万円」と「10年後の200万円」とでは、どちらの価値が高いだろうか? 同様に10%の金利(割引率)で計算してみよう。

・ 1年後の100万円 → 90.9万円(≒100万円÷(1.1)の1乗)

・ 10年後の200万円 → 77.1万円(≒200万円÷(1.1)の10乗)

これを比較すれば一目瞭然。1年後の100万円のほうが、10年後の200万円よりも価値が高いことがわかる。

「将来のキャッシュフロー」の現在価値を求める際にも、この計算方法は有効である。たとえば、毎年300万円のキャッシュフローを生むマンションの場合であれば、1年後の300万円と10年後の300万円とでは現在価値が異なる。今度は、金利が6%だとしよう。

・1年後の300万円 → 283万円(≒300万円÷(1.06)の1乗)

・10年後の300万円 → 168万円(≒300万円÷(1.06)の10乗)