些細な言動を「不謹慎」と罵る異常さ

なぜ、「不謹慎狩り」の自警団が闊歩するのか

 熊本地震の被害が広がっている。被災地への迅速な支援が求められる一方、インターネット上では、「不謹慎狩り」とも呼べる状況が蔓延し、議論が巻き起こっている。

 特に有名人は大変だ。笑顔の写真に対して「不謹慎だ」と批判が集中したり、義援金による支援の報告に「売名行為」などと言いがかりをつけられたり。「不謹慎狩り」の被害は一般人にも及んでいて、些細な言動が批判の対象となっている。フェイスブックにケーキの写真をアップしただけで、「人格を疑う」と非難された人もいるというから驚きだ(ハーバー・ビジネス・オンライン4月22日付)。

 こうした状況は東日本大震災の際にも見られ、お花見を自粛する動きにもつながった。被災者のことを想って心が痛む気持ちはわかるものの、過剰な自粛をする必要はない。ましてや、他人にまで自粛を強要し、「不謹慎だ」と批判することはお門違いだと思うが、世間ではそう考えていない人も少なからずいるようだ。殺伐とした空気を、さらに殺伐とさせてなんの得になるのか。そっちのほうが不謹慎ではないのか、と筆者は思ってしまう。

 実際に、どのくらいの人が不謹慎狩りを支持しているのか。リサーチ会社「ジーリサーチ」の協力を得て、大学生から社会人までの男女200人にアンケート調査を実施したところ、28.0%の人が「自然災害などがあった際、笑顔の写真をネット上にアップする、レジャーに参加するなどの些細な言動を『不謹慎だ』と批判する人」に対して、「理解できる」と回答した。つまり3割近い人が自粛を要求していることになる。

豪華な食事をアップするのは常識がない?

 なぜ、些細な言動を「不謹慎」だと思うのか。回答者の意見を見ていこう。

「何気ない言動が、熊本の人にはダイレクトに捉えられる。豪華な食事をアップすることなどは、一般人から見ると考えられない。『常識がないんだなぁ』と思ってしまう。東日本大震災の時は、ずっと同じCMが流され、全体的に自粛感が感じられた」(44歳/女性/大阪府)

「災害時に楽しむことを注意するのは当たり前」(39歳/男性/東京都)

「今の状況で笑顔の写真を撮ることは、思いやりがない。見た人が不快になると思う」(36歳/女性/愛知県)

「売名行為や偽善にしか見えないタレントのわざとらしい行動は、見え透いていて不快極まりない」(56歳/男性/大阪府)

「人の不幸を喜んでいるように見える」(32歳/男性/東京都)

「笑顔の写真を撮ること自体は構わないと思うが、それを誰でも見ることができるネットにアップするのは理解しがたい」(36歳/女性/北海道)

「自分が被災者と同じ立場なって考えることが大切だと感じる。不謹慎な言動は、相手の状況や大変な思いをされている方々に対して、失礼だと思う」(21歳/男性/大阪府)