借りた金は金利を付けて返す。そんな常識が通用しない世界の幕開けを告げる“事件”が発生した。

 それは、独立行政法人である石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の入札による資金調達で起きた。JOGMECは借入額5178億円、借入期間1年間の資金調達を入札で実施。4月13日にその結果が発表された。

 応募総額は約2.8兆円、応札倍率は5.5倍となったが、驚くべきはその落札貸出金利だ。最高でも0.00001%、平均はなんと0.00000%(小数第6位以下切り捨て)だったのだ。

農林中央金庫の本店が入るビル。貸出金利0%での入札は、銀行界を騒然とさせた
Photo:JIJI

 入札関係者によれば、落札したのは全4金融機関。そのうち上限金額で入札し、借入額の8割近くを落札したのが巨大機関投資家である農林中央金庫で、入札した貸出金利は0%だったという。

 銀行界ではそもそも「貸出金利0%」を想定していないので、多くの銀行がシステム上対応できない。そのため、システム上の最低金利0.001%で入札したある銀行は、この想定外の金利水準に太刀打ちできなかったという。

 一方、貸出金利0%を提示した農中などは、「手作業による入力で入札したのではないか」(入札参加銀行関係者)とみられている。