人類初の状況下で
どのような運用戦略が有効か

マイナス金利下で銀行は貸出より出資機能を強化すべきマイナス金利という人類初で、前例のない局面では、どのような運用戦略が有効か

 時すでに3月後半。2016年度運用計画を各金融機関は策定する時期、企業は16年度投資計画策定の段階だ。

 特に今回はマイナス金利という人類初で、前例のない局面だ。下記図表1は「世界の金利の『水没』マップ」で、国別・年限別の国債利回り、イールドカーブ状況を示す。

 筆者は昨年来、同図表を用いながら、マイナス金利、「金利水没」のなかで資産運用を行うには、「LED戦略」つまり、「(1)長く(Long)、(2)外に(External)、(3)多様な(Diversify)なリスク」の3分野しか選択肢はないとしてきた。今日の金融機関の戦略もこのLED戦略に集約される。

 ただし、こうした運用戦略の暗黙裡の前提は、「水没」にともなう「運用難民」を受け入れる確固たる基盤、米国の存在だった。米国経済への信認から米国は水没せず「浮き輪」の存在で、世界の運用者が「運用難民」として「浮き輪」に向かったことが米ドル上昇圧力になった。

 しかし、年初来、米国の減速不安から「浮き輪」が下がりだし、「浮き輪」不在の「世界水没」不安が世界の市場を揺るがし、従来のLED戦略の反動の円高回帰、株安の変動が生じた。ただし、米国が年初来10円近くドル安の市場誘導を行ったことで、新たな水準で小康状態を取り戻してきた。16年度を展望し、基本はこれまで通りにLED戦略を続けざるをえないだろう。

◆図表1:世界の金利の「水没」マップ(2016年3月18日)

マイナス金利下で銀行は貸出より出資機能を強化すべき(資料)Bloombergよりみずほ総合研究所作成
拡大画像表示