「週刊ダイヤモンド」2010年4月17日号の特集「ウォール街 復活の光と影」からの特別公開第二弾。混迷を極めた金融制度改革議論を振り返ります。※本文及び図表類は本誌掲載時のまま再掲載しています。

 ページ数にして1300、その厚さは30センチメートルを優に超える。3月15日に、米上院の銀行委員会のドット委員長が発表した「金融安定回復法案」の修正案だ。

 この修正案には、発表前から大きな注目が集まっていた。というのも、草案の発表と前後してドット委員長の足元、民主党が上院で安定多数を失ったため、提案時と中身が大きく変わるのではないかと見られていたからだ。

 そうしたおおかたの見方は的中、「共和党に大きく配慮した妥協案」(金融関係者)となっていた。共和党は民主党に比べて大手銀行など金融界に近いといわれるだけに、金融機関幹部からは「ホッとした」と安堵の声が漏れていた。

 上院では昨年来、ドット委員長が共和党のシェルビー筆頭理事とのあいだで超党派による提出を目指して議論していたものの折り合わず、今年に入ってから交渉相手をコーカー議員に切り替えて話し合いを進めてきた。

 ところがこれももの別れに終わる。加えて民主党からは「共和党への譲歩」に対する反発が強まり、結局、ドット委員長の個人案として提出する羽目に。銀行委員会ではどうにか可決することができたものの、譲歩を受けたはずの共和党票はゼロ。本会議での決議は微妙で、金融制度改革は完全に“政争の具”と化している。

 こうした経緯から、前述のボルカー・ルールこそ反映されたものの、当初のオバマ政権の方針や民主党の考え方、ひいては下院法よりも後退している感は否めない。
さらに今後、下院とすり合わせたうえで、再び上下院の本会議で議決を経なければならず、紆余曲折が予想される。