世の中には、克服できない病気がある。家族は、そんな病に襲われた身内を献身的に介護する。

 しかし、それが長く続くと、家族の間で摩擦が起きることがある。尽くしてくれた家族の気持ちを台無しにするような行動を本人がとり続ければ、それはなおさらだ。

 家族の信頼を得られない人は、仕事では「勝ち組」だったとしても、家庭では「負け組」かもしれない。それは本当の「勝ち組」とは言えない。

 連載27回目は、20年ほど前に「脳の病気」を患ったのがきっかけで人が変わってしまい、家族の心に「深い傷」を残した会社員を紹介しよう。あなたの職場にも、このような社員がいないだろうか?

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■今回の主人公――はい上がり切れなかった「負け組社員」

 長谷川 巧(仮名・59歳)

 家具販売会社(社員数70人)の業務部長。30代後半のときに「脳の病気」を患い、その後復帰。だが発作を繰り返し、家族はその対応に疲れ切っていく。毎晩、酒を浴びるように飲み、しだいに体が病んでいく。最後は癌になり、死を迎える。

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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)

粛々と遺体をあしらう医師と看護師
家族が背負った「重い十字架」が消えたとき

「午前1時24分、ご臨終です」

 30代後半の医師がベットの脇で淡々と話す。まるで、この時間帯に死ぬことがわかっていたかのようだ。