会社でバリバリの「エリート」と見られている社員の中には、職場で見せる顔とは「別の顔」を持っている者もいる。人の本性は、一面だけを見てもわからないものだ。

 ある有名シンクタンクのエリート課長は、10代の頃に「家庭内暴力」を起こして暴れまくった経験がある。一時は母親といがみ合い、刃傷沙汰にまでエスカレートしそうになったという。

 連載26回目は、この課長が部下をいじめ抜く姿を紹介することを通じて、彼が負った「人生の傷」について考えたい。あなたの職場にも、このような社員がいないだろうか?

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■今回の主人公――足許が揺らぐ「隠れ負け組社員」

 滝本智成(仮名・38歳)

 銀行系のシンクタンク(社員数1200人)の調査部に勤務する。上司からの評価は高く、30代で課長になる。同期生の中で一番早い出世であり、「将来は役員」とまで言われている。だが、部下への対応は攻撃的で、評判はよくない。弱い者にヒステリックに当たる理由は、10代の頃に味わった苦痛の影響もあるようだ。

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部下を罵倒するエリート課長が持つ
“家庭内暴力”という知られたくない過去

「おい、同じことを言わせるな!」

 課長の滝本智成(38歳)が怒鳴る。相手は、新卒で入社して3年目の松浪だ。出張報告書を提出するのが遅れたようだ。