Photo by Yoshihisa Wada

変化し続ける組織作りの秘訣とは?

 変化し続ける「変化力」の経営は、非常に不確実な世界で必ず結果を生み出すための取り組みだ。目標や命題としては極めてシンプルなものである。重要なのは、シンプルな命題を実現するためにどのような仕組みを用意できるかだ。今回は、人材育成・評価、リーダーの資質などの側面から私たちの実践を紹介したい。

 約10年間GEで働いて驚き、学んだのは、変化を恐れぬどころか自ら変化を仕掛けていく変化力の凄まじさだった。バスケットのピボットのように軸足は動かさず(大きな方向性は維持しつつ)、片足は状況に応じて動かして変化を起こしていく。

 ジェフリー・イメルトは、自分と前任CEOのジャック・ウェルチ両方の出身事業であるプラスチック部門の売却に逡巡を示さず、そして「デジタル・インダストリアル・カンパニー」への変身をめざしてGEキャピタルのファイナンス事業の売却を進めた。自らが予測した将来の事業展開の実現に向けて「祖業」とか「稼ぎ頭」などといった理由で旧態依然としてあるのを徹底的に嫌う。

 これは「合理的」という一言では片づけられない文化だ。変化そのものを楽しんでいるとさえ言える。

 変化力と変化をよしとするポジティブな文化、変化を促すためのイノベーションとテクノロジーの活用。この3つを企業風土にまで高めた結果、どのような競争力が付いてくるのか。その一例として日本GE合同会社が提供している「More Than Finance」というお客様向け価値提供を、人材育成の前提話として先に書いておこう。

「More Than Finance」は、お客様との深い対話のための道具である。私たちは設備や機器のリースや自動車リースなどの事業を展開しているが、単なるファイナンス会社ではない。

 私たち自身が変化力を身につけるために試みてきたさまざまな取り組みの中で学んだノウハウそのものをお客様に提供するのが「More Than Finance」である。

 例えば問題解決手法やファシリテーションスキル、人材開発プロセスなどだ。それらについて私たちは、トップからマネジャー層、社員に至るまで徹底的に教育を受けている(言うまでもなく、それは自分たちが変化するためである)。

 お客様と話しているときに、「私たちはこんな問題に直面し、それを解決するためにこんなことをやってきました。今は新しくこんなことに取り組んでいます」とご紹介すると、その内容に興味を持たれるお客様は多い。何しろ経営の課題は大企業だろうが中堅、中小企業だろうが本質的に大きな違いはないからだ。

「ちょっと具体的に聞かせて」。時には守秘義務契約を結んでお客様の現実の課題を伺うこともある。当然ながら相対するのは経営の上位層になり、深い信頼を築けると同時に私たち自身も経営の深い問題領域をさらに学べる。

「More Than Finance」は有償ではない。あくまでもお客様の課題解決が最優先であり、関係の強化が副産物として与えられる。ノウハウを得て経営課題を一つひとつ解消できたお客様は当然競争力が高まり、私たちの競争力も呼応して高まる。お客様をより深く理解することにより、私たちのお客様への提案の質も向上する。私たちは、コンサルティングや付加価値の提供を通じてお客様と共に変化し、自らの変化力を強化するのである。