世界最大の経常収支黒字国ドイツの掟破り

 最近、伊勢志摩サミットを展望し、財政出動への期待が高まっている。そのなかでは、ドイツの反対をいかに抑えるかがカギを握っている。伊勢志摩サミットで日本はドイツを説得できるかも大きな課題だ。

 図表1は世界の経常収支の比較である。今日、世界的にみて地域別で最大の経常収支の黒字を抱えるのはドイツを筆頭にしたユーロ圏である。歴史を振り返れば、1970年代以降の変動相場制移行後の世界の経済秩序の掟として、常に経常収支の最大黒字地域が、財政も含めた内需拡大で世界経済をけん引する“機関車”であることが暗黙裡に求められてきた。同時に、自国の内需を海外に明け渡すべく、自国通貨高圧力を受けてきた。

 具体的には、1970年代以降、日本とドイツ(当時は西ドイツ)が機関車の役目を果たし、2000年代に世界最大の経常収支黒字国の座が中国に移れば、2008年には中国が財政を拡大して世界の機関車の役目を果たした。同時に、通貨高の圧力を受け入れてきた。

 そうしたなか、今日、世界最大の黒字国のドイツを中心にユーロ圏は頑なに財政緊縮を掲げ、「金利水没」による通貨安競争によって外需拡大を志向する。それは、他国の外需を奪い取る近隣窮乏化になる。

サミットでドイツを協調的財政出動に巻き込めない理由