違法と合法の狭間に横たわる
「租税回避」とはそもそも何か?
パナマ文書が公表され、タックスヘイブンを活用した租税回避の一端が明らかになり、改めて税の公平性の問題が問い直されている。多数の日本企業の名前が含まれており、そのほとんどは合法で納税義務も果たしていると思われる。
さて、改めてマスコミ報道を振り返ると、気になることは「租税回避」という言葉の使い方である。そもそもこの言葉は、法に違反する脱税と合法な節税の間に広がるグレーな「領域」のことを指している。英語でも脱税は「tax evasion」、節税は「tax saving」、租税回避は「tax avoidance」と区別されて使われる。
パナマ文書でマスコミや多くの国民が興味を持つのは、「脱税」であろう。今後情報が開示されたケースについては、個別問題として国税当局が丹念に調査を進め、申告漏れがあるかどうか、さらには「脱税」に当たるかどうか、告発を含めた処理をすることになると思われる。
実は、脱税の問題とは別にパナマ文書問題で浮き彫りになったことは、米系多国籍企業を中心とする「租税回避」の問題である。これが大きな国際問題に発展したきっかけは、2012年の英国スターバックス問題で、原材料の仕入れや商標権・特許権などの無形資産の支払い(ロイヤルティの使用料)という形で、所得をスイスやオランダといった低税率国に移転させ、納税額を人為的に低くしていたことである。
この取引の基礎となる私法取引には、違法なものは一切含まれていない。個々の契約を積み重ねて、グループ全体として英国での租税負担を免れたという事例である。
しかし、このことが明るみに出た結果、英国市民の不買運動を巻き起こし、結果としてスターバックス社は英国政府にいくばくかの手打ち金を支払うこととなった。問われたのは企業モラルである。
その関連の議論で、アマゾンやグーグルなど米国IT企業がタックスヘイブンに利益をため込む国際的租税回避スキームが判明し、大きく取り上げられ注目されるところとなった。多くの米国多国籍企業の幹部が議会に呼びつけられ、証言させられたのである。