再開する消費税軽減税率の議論が
究極のポピュリズムである理由

軽減税率導入は、市場にどんな影響を与えるだろうか
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 連休明けから与党税制協議会で、消費税軽減税率の議論が再開する。本年末までに詳細を決めなければ、2017年4月からの消費税率10%への引き上げに間に合わないので、議論は加速するだろう。

 筆者は何度もこの連載で、軽減税率の導入を問題視してきた。消費者・事業者・税務当局に多大なコストをかける一方で、政策効果は「低所得者対策」ではなく、「高所得者」により多くの恩恵をもたらすことを理由に、究極のポピュリズム政治であると反対してきた。それに関連する記事は、以下である。

 ・第84回 軽減税率は究極のポピュリズム
 ・第73回 軽減税率は消費税制度の劣化
・第63回 公明党案は本当に事務負担軽減になるか

 永田町では、安保法制での公明党の協力が、公明党の党是とも言える軽減税率の導入に大きく影響すると、半ば公然と語られ始めている。

 今回は、軽減税率の区分が「税制を笑いものにした」(brought tax system into mockery)とまで揶揄された英国の裁判例を取り上げてみたい。

 食料品の多くに軽減税率が導入されている英国では、数多くの訴訟事例が報告されている。最近話題になったのが、「ポテトチップス裁判」である。

 P&Gは「プリングルス」という商品を販売している。多くの日本人も見覚えのある商品で、筆者も「ポテトチップス」として買った経験がある。

 英国でもみんな「ポテトチップス」と認識して購入しているのだが、P&G側は、標準税率(20%)が適用されるポテトチップスではなく、ゼロ税率が適用される「ケーキ」と認識して消費税を納めていなかった。それどころか、ゼロ税率なので、仕入れに要する消費税額は還付されていたのである。