今、中国では史上初のアイドルブームを迎えている。上海、北京、広州などを拠点にしたアイドルグループが次々と誕生し、中国政府公認のアイドルグループまで誕生している。なぜ、中国でアイドルブームが起きているのだろうか(取材・文/ジャーナリスト 中島 恵)

中国初の現役学生アイドルグループに
夢中になる男子大学生

上海を中心に人気急上昇中のアイドルグループ、Idol School。現役学生で構成されているのが特徴

「彼女ががんばっている姿を見ると、自分も勉強がんばろうという気持ちになるし、ファイトが湧いてきます。すごく前向きになれるんですよ」

 毎週末、上海市内の小劇場で行われるアイドルのコンサートに出かける陳くん(20歳)はごく普通の大学生。他の中国人同様、高校までは勉強一筋の生活を送ってきたが、大学生になって、やっと夢中になれるものを見つけた。

 中国初の現役学生アイドルグループ「Idol School」(アイドルスクール)のコンサートに行くことだ。東京・秋葉原のAKB48劇場のように少人数のコンサートなので、いつも好きなアイドルを真近で見ることができる。ワクワクドキドキして、胸がときめくのだという。

「こんな経験、生まれて初めて。とてもうれしいんです」といって顔をほころばせる。

上海で最も勢いがあるアイドルグループは
今年1月に正式デビューした「Idol School」

「Idol School」が正式にデビューしたのは今年1月。「モーニング娘。」などで活躍した中国人のリンリンが作詞・作曲・プロデュースなどを行っていて、25人の現役学生で構成されている。地方出身の女の子もいるが、きちんと学校に通いながらアイドルとしても活躍しており「二足のわらじ」が特徴だ。中には成績優秀な女の子もいて、「きちんと勉強もするから、アイドルをやらせて」と両親を説得して晴れてアイドルになったという女の子も……。

 毎週末に行われるコンサートの動画配信は数万人の視聴があり、微博(中国版ツイッター)のフォロワーは5月時点で16万人を超えた。陳くんによると、今、上海で最も勢いがあるアイドルグループの一つがこの「Idol School」なのだという。

 上海でアイドルといえば、日本では「AKB48」の海外姉妹ユニット「SNH48」が有名だ。12年に発足し、日本人の宮澤佐江などがメンバーとなったこともあって、日本で大きく報道された。中国でも人気投票など総選挙を行って話題を集めたグループだ。その他に、上海にはメイドカフェのメンバーが中心となったアイドルグループ「LUNAR」(ルナ)もある。いわゆる“ピン”のアイドルではなく、グループのアイドルが全盛期を迎えているのだ。