ニュースやバラエティ、アニメなど約20番組を、24時間無料でインターネット配信する新たなメディアが誕生した。IT企業大手のサイバーエージェントが、テレビ朝日と組んで開局したインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」だ。そこで、総指揮を取るサイバーエージェントの藤田晋社長に、「総合プロデューサー」と「経営者」の二つの側面からこの新事業について聞いた。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)
「好きな時に好きなもの見る」ことに限界
ネット動画の新コンセプト「受け身視聴」とは
――4月11日にAbemaTVが本開局しましたが、手応えはいかがですか。
かなりいいと思っています。インターネットのサービスでは、会員数やダウンロード数といった数字はいくらでも増やせるんですけど、本質的な視聴人数や視聴時間を見て手応えを感じています。見た目の派手な数字ではなく、実際にAbemaTVが使われている、見られているという実感値として。
まだ、スタートして間もないですが、これから伸ばしていけば十分マスメディアになり得る。想定はだいぶ上回っています。
正直なところ、こういうサービス自体がこれまで世の中になかった。「受け身視聴」というコンセプトもそうですし、そういうメディアにお金がかかっているコンテンツを流すというのもそうです。
視聴者に受け入れてもらえるか分からない部分があって、仮説の下で事業を開始したのですが、いけそうだなという手応えを感じています。
――「受け身視聴」というコンセプトについてもう少し詳しく教えてください。
「自分で好きな動画を見つけろ」って言ったって、探すのが面倒くさいじゃないですか。頭の中に「あれが見たい」というのがないといけないですし。
iTunes Store(音楽や動画を購入してダウンロードできる米アップルの提供サービス)の売り上げが伸び悩んだのを見て、「好きな時に好きなものを聞ける、見られる」って言っても限界があるなと思いました。
僕もiTunes Storeで音楽を買っていましたけど、自分で楽曲を選んで再生するのって面倒くさいんですよ。それよりもやっぱり、サブスクリプション(定額制配信サービス)が自動で出してきたものを聞く。そうした受け身のほうが人間、楽なんだろうなと。
――YouTubeにも、1時間くらいいろんな音楽がかけっぱなしになる「作業用BGM」というコンテンツがありますね。