忠誠心が強すぎる組織は
問題行動が隠蔽され続ける

 3つめのキーワードは、組織に対する「秩序と忠誠心」である。

 長く安定的なメンバーで構成され、その成功のゆえにしっかりとした秩序が形成されてきた組織では、組織や上司への強い忠誠心が醸成される。すると、社会的な公正や、消費者へ誠実さ、企業理念といった外に向かう道徳基準よりも、権威や忠誠という内部に向かう道徳基準が優先されてしまい、「組織のために」問題行動が実行されることがあるのだ。そして、やはり、秩序の維持と忠誠心のために問題行動が隠蔽され続けてしまう。(*2)

 これを予防するためには、安定的固定的な秩序を、ある程度流動化させ、動的な秩序に変えていかなくてはならない。外部からの優秀な人材の採用も必要だし、基幹人材の人事異動や組織構造の改変も一定頻度で必ず行わなければならない。専門性の高い仕事の場合、入れ替えがしづらいことは百も承知だが、社内に“聖域”を作ってしまうと、必ず問題が起こる。

 また、最終消費者や社会一般との距離を近くすることで、「この人たちに危害を加えてはいけない」「欺瞞はいけない」という道徳心を呼び起こすこともできるだろう。消費者との距離が遠く、普段から内部の人としか会わない状況になってしまうと、組織の(短期的な)利益を安易に優先させてしまう。意識的に、「直接触れ合う機会」を多く持つといった、消費者や社会との距離を近づける各種の工夫を行うことで、「この人たちが喜ぶ商品づくりをしよう」という気持ちになるはずだ。

 以上、3つのキーワードについて述べてきたが、この観点で考えると、日本のいわゆる「いい会社」は非常に危険だ。今日、安定した秩序と忠誠心が築かれているということは、「かつて」成功した、ということである。すると、往々にして「今は勝てない」状況にある。しかし、過去の成功者としてのプライドがあるために、負けのポジションに甘んじることができず、さりとてM&Aなどの思いきった手段をとることもできていない。そして、無理な条件下で「勝て」と言い、現場は「忠誠心」ゆえに不正に走ってしまうのだ。

 なかでも、最大の問題は、やはり「戦略の欠如」という不作為の罪である。経営者は十分に戦える「戦略作り」をしなくてはならない。それがないまま、いくら規程の改変やコンプライアンス研修を行っても、結局は同じことが繰り返されるのである。

(*2)ジョナサン・ハイトの道徳基盤の考え方を参考にしている。

(構成/大高志帆)

※なお、本記事は守秘義務の観点から事案の内容や設定の一部を改変させていただいているところがあります。