ここで問題です。図表4をご覧ください。

[問題]A社は変動費率30%で固定費5000万円、目標利益1000万円です。B社は変動費率70%ですが、固定費と目標利益はA社とまったく同じです。それぞれの損益分岐点を計算してみてください。

 答えは、A社が約8600万円、B社が2億円となります。

 A社は変動費率が30%と低く、限界利益率(1-変動費率)は70%ときわめて高いので、目標利益に届く売上高も8600万円と低くて済みます。反対にB社は変動費率が70%と高く、限界利益率は30%ときわめて低いので、目標利益に届く売上高は2億円と高くなってしまいます。どんな商売だとしても、この構造で売上を上げるのは大変ですね。

 いま出てきた「限界利益率」とは限界利益を売上高で割ったもので、粗利率(売上高総利益率)と近い数値です。大ざっぱには粗利率と置き換えて考えてよい場合もあります。

「粗利率をいかに高くするか」ということと「固定費をなるべく低くする」ということが、目標利益を上回る売上高を達成するために大切なのです。このようなことが損益構造の違う二つの会社の比較でわかります。

安本隆晴(やすもと・たかはる)
公認会計士・税理士。株式上場準備コンサルタント。
1954年静岡生まれ。1976年早稲田大学商学部卒業後、朝日監査法人(現・あずさ監査法人)などを経て、安本公認会計士事務所を設立。1990年(株)ファーストリテイリング(旧・小郡商事)の柳井正社長と出会い、以降、株式上場準備コンサルタント・監査役として、同社の成長を会計面から支えてきた。現在、アスクル(株)、(株)リンク・セオリー・ジャパン、(株)UBICの監査役でもある。2013年3月まで6年間にわたり中央大学専門職大学院国際会計研究科特任教授を務めた。2014年5月より若手経営者向けの勉強会「未来経営塾」を開講している。

(本連載は毎週金曜日更新。次回は6月24日(金)公開予定です)