AV業界とHRNの目的は同じ
共闘するほうが建設的

中村 一方で、全てのAV女優が「個人事業主」だと自覚しているわけではないですし、業界でもそうしたことに知識のない人はいますよね? AV業界の中で法律的に一般化しているのは未成年の出演と暴行はダメ、それと性器はモザイクで隠すくらい。今回のHRNの提言は、僕も含めてAVと法律を考えるいい機会になりました。

川奈 残念ながら、多くのAV女優は「個人事業主」の自覚はないでしょう。どこかのプロダクションに所属することによって、まるで女優さんが事務所に雇用されているかのようになる。私はそれを「所属マジック」と呼んでいます。

中村 いくら昔と比べて社会化してクリーンになったとはいえ、「所属マジック」を使って女優を搾取するプロダクションは今でも存在しているでしょう。数はだいぶ減ったでしょうが。当事者や関係者が悪徳なプロダクションを告発したくとも、撮影現場で女優同士の会話を禁止するなどして、情報をシャットダウンしている。AV女優がプロダクションから開放されるのは、今の段階ではなかなか想像ができませんね。

川奈 こうした悪質な会社が存在する以上、HRNの主張すべてが間違っているとは言いきれませんね。本来なら、AV出演者やメーカー、制作側とHRNが共闘して悪質なプロダクションを減らしていければ一番建設的だと思うのですが。

中村 「被害をなくしたい」という意味で目的は一緒なのに、なぜか互いに意見が食い違い、女同士で言い争っているようにも見えます。共闘しないのはどうしてですか? これ、男同士だったらすんなり目的に向かって進むような気がします。

川奈 実は、報告書が出た直後、関係者のひとりにフェイスブックから「被害報告に出ていたプロダクションの名前を教えてほしい」とお願いしたんです。どこの事務所かわかれば業界を挙げてそこを干すことだってできますから。ところが、団体側は被害者のプライバシーを理由に教えてくれなかった。後から知ったことですが、被害者の話は基本的には裏取りをしないという方針らしく、随分いい加減だなと思いました。

中村 なるほどね。被害者、加害者の特定がないから、話が全然進まないわけですね。加害者の特定なしに、業界全体が加害者みたいな言い方をすれば、それはトラブルになっちゃいますよ。ただ問題提起された以上、可能な限り、改善したほうがいいでしょう。AV女優の被害をなくしたいのはフェミニスト団体だけではなく、多くのAV業界の人たちも同じだと思うので、お互い歩み寄って、本来の目的に向かってほしいです。

川奈 まあ、AV業界も視聴者のニーズを追うことばかりに力を入れて、AVの制作過程や女優さんの人権を守るためにどんな取り組みがなされているかなど、業界の内情はまったく発信してきませんでした。今回は、そのツケが回ってきてしまったのかもしれませんね。報告書には「被害者への救済措置」など有益な提言もありますし、実はHRNの主張には賛同できる部分がとても多いんです。向こうから協力を求められたらAV業界としてもやぶさかではないと思います。