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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国では義務教育でサイバー攻撃対策を教える

小学生ホワイトハッカー育成や兵役での選抜も

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第9回】 2016年6月13日
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北朝鮮とみられる
サイバー攻撃が続々

 5月31日、ソウル中央地方検察庁は、「2015年秋から2016年1月にかけて、情報セキュリティ会社をハッキングしたのは北朝鮮の組織」という内容の捜査結果を発表した。

 北朝鮮のハッキング組織が、韓国のある金融情報セキュリティ会社のサーバをハッキングして悪性プログラムを仕込み、アクセスした社員の端末が感染。ハッキング組織は感染端末からこの会社のコードサイニング証明書(注2)を盗み、これを偽造して内部資料を盗もうとしていたらしい。

 ソウル中央地方検察庁の「個人情報犯罪政府合同捜査団」(注3)の捜査によれば、同社が保有するテスト用のデモサーバには、複数回にわたって北朝鮮のIPアドレスからのアクセス形跡が残っていたという。幸い、ハッキングが早期発見できたため、公共機関などのデータが盗まれるなど、大事には至らなかった。

 5月中旬には、韓国空軍ホームページのサーバがハッキングされ、空軍内の端末10台が悪性コードに感染する事故も起きている。韓国メディアによると、空軍の調査結果、北朝鮮のハッカーがよく使う手法でハッキングされた形跡が見つかったという。

 また、3月には、北朝鮮が韓国の外交・軍責任者のスマートフォンをハッキングし、40人の通話内容とショートメッセージサービス(SMS)の内容を盗んだと、国家情報院が発表した。

 さらに2月には、北朝鮮のハッキング組織が韓国の地方鉄道公社の職員にフィッシングメールを送り、職員のメールアドレスとパスワードを盗もうとした事件があった。この事件は、国家情報院が北朝鮮のハッキングの兆候を見つけて調査にあたっていたことにより発覚したものだ。

 このような北朝鮮によるハッキング、そしてサイバーテロの危険性が高まる中、社会の混乱と経済的被害を防止するため、サイバーセキュリティはとても重要な分野になった。


注2:コードサイニング証明書 インターネット上で配布・流通するソフトウエアを誰が作ったかが確認できるデジタル署名

注3:個人情報犯罪政府合同捜査団 2014年4月に発足。個人情報を盗むハッキング事件を専門的に捜査する。検察の指揮の下、ホワイトハッカー、IT専門検察捜査員、警察、金融監督院、国税庁、韓国インターネット振興院、未来創造科学部、安全行政部、放送通信委員会、大統領官邸の個人情報保護委員会など複数の省庁から集まった70人が捜査にあたる

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」

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