しかし、現在でも、あたかも税理士に仕事を与えるために毎年税金に関するルールの改訂が行われるように、公務員は、巧みに業務を複雑化させて、AIによる人間の業務の置き換えを阻止するかもしれない。

 さて、新しい生産関数Y=f(N,K)に於いて、必要なYに対してNが大幅に縮小する事態が起こった場合、余剰となった労働者はどこに行くことになるのだろうか。

 生産効率の飛躍的な向上によって余暇が増える状況は、かつて経済学者のケインズが想像して実現しなかった世界だが、今後の技術の発展は、これを可能にするかもしれない。

 その場合に有望な職種の一つは、他人に余暇を楽しませる広義のエンタテインメントだろう。スポーツ、芸術、芸能などに関わる人が増えるかもしれない。

 筆者は、その方面に明るくないが、現在、各所に生まれている各種の「アイドル」という職種などは、案外将来を先取りしているのかもしれない。

 あるいは、いわゆる水商売的な接客業がエリートの職場になる可能性もある。

AI技術の発展で貧富の差は拡大
政策としては再分配が重要

 アイドルやスポーツ選手が彼(彼女)の周囲の人を楽しませるとしても、こうした「芸」を生業とする人が増えると、一握りの大成功者を除いて、彼らに対する経済的報酬は大きくない可能性がある。

 また、AI的な技術では、技術的な優劣がはっきり付くし、先に優位を得た者が多くの顧客と顧客のデータを集めて、独占的地位を確立しやすい。加えて、AI技術の周りには、獲得したネットワークが大きくなるほどネットワークの価値が幾何級数的に高まるネットワーク外部性が働く可能性が大きい。

 即ち、AI技術の発展と共に、今後利益はますます偏在しやすくなるはずだ。こうした社会で、経済政策としては何が重要なのだろうか。

 AI周りのイノベーションに重要性があるとしても、イノベーションは政府が投資して計画的に生むことができるようなものではない。