6月上旬の1ドル90円台前半から急激な円高が進んだため、このところ円高に関するニュースが溢れている。円高の要因は「米国の景気減速懸念が強まったから」とか、「日米の金利が縮小したから」と、さまざまな解説がなされているが、実際のところそれが為替にどういう経路で影響を与えているのか分かりにくい。

 そこで、ここではいま一度、どのような要因が為替を動かすのかについて、おさらいしてみよう。

 まず、外国為替とは異なる通貨を交換することをいう。略して外為とか為替と呼ばれることも多い。「今日は1ドル85円だ」というのは、円とドルという異なった通貨の交換比率を表している。この交換比率が外国為替相場と呼ばれる。

 では、なぜ違った通貨を交換する必要があるのだろうか。全ての経済取引が、その国の国内で完結していれば、他国の通貨と交換する必要はない。しかし、現代経済では外国との間で活発に経済取引が行われているので、通貨を交換する必要が出てくる。国際間の経済取引は大きく分けると2つ。1つ目がモノを交換する貿易取引。2つ目がおカネを増やすために行う資本取引。具体的には、株式や債券への投資である。

 例えば、日本が米国から小麦を輸入しようと思うと、円をドルに替えて代金を支払わなくてはいけないし、米国債に投資する場合も、円をドルに換えて米国債を買う必要がある。特に、世界中の経済取引では、取引に使う通貨としてドルが最も多く使われているので、日本を中心に考えると、円とドルの交換比率が問題になるわけだ。次いで取引が多いのがユーロ。この円、ドル、ユーロの三つが、日本の外国為替市場における3大通貨である。

 為替相場がなぜ動くかというと、通貨も1つの商品と考えれば分かりやすい。商品の価格は「需給」つまり需要と供給の関係で決まる。需要が増えればその商品(通貨)の価格は上がり、供給が増えて需要を上回れば、反対に価格は下がる。1つ注意を要するのは、為替の場合、価格の表示の仕方が直感とは反対ということ。1ドル100円が85円になったとしたら、円の価値は上がっている。1ドルを買うのに100円必要だったのに、85円で買えるようになったので、円が強くなっている、円高になっているわけだ。