――確かに、知識のある医師や医療関係者なら、状況がすぐに理解できますし、対策をとることもできます。しかし、もともとカリスマ性の強かった創業者だったりすると、かなりやっかいでしょうね。

 ある企業のオーナー経営者の例なのですが、自分が後継者としていた弟さんを「クーデターを画策している」と言い出して、追放してしまいました。その後、次男の長女である20代のお孫さんを後継者に迎えた途端に、亡くなってしまいました。当然ながら、そのお嬢さんでは若すぎて経験もない。その企業はいま、大混乱に陥っていると聞きます。

 別の例ですと、非常にカリスマ性のあるワンマン社長だった方が、業績が上向かないので、後継者だった方がある新規事業を提案したところ、「気に入らない」と激怒して、突然、解任してしまいました。社員は何も言うことができない。社内には息子さんがいるのですが、息子さんもお父さんの言いなりで現在の立場にいるので、文句が言えない。業績はどんどん悪くなる一方のようです。

 他にも、認知症にかかってしまった創業者が、経営を任せたはずの息子さんに「お前には任せられない」と言い出して、取引先の商談に行ってしまい、案の定、取引先から「お父さんの様子がおかしい」と指摘された会社のケースもありました。いまだ、そのお父さんは会社に居続けています。

 ある業界団体のケースでは、会長職をとっくに辞めたはずの方が、突然、頻繁に会合に顔を出すようになりました。しかも記念撮影の際には、現役の会長や幹部職の方を差し置いて、どっかりと真ん中に座ってしまうのです。明らかに様子が変なのは、皆わかりますが、その団体で実力者だったこともあり、誰も注意できない。もう90歳近い方なのですが、周囲には「俺も歳だな。今年で65歳になるよ」と言っているようです。

 こんな例は枚挙に暇がありません。特に、信頼してかわいがっていた親族や部下を急に遠ざけるケースは多いです。

「性格が変わった」と思ったら要注意
軽度な時は判別が難しいことも

――経営者の方が認知症になったかどうか、どのように見分けたらよいのでしょう。何か兆候が出てくるのでしょうか。

 先ほどお話しした例は、皆、アルツハイマー病の方です。もともと性格が穏やかだった方なのに、突然大声を出すようになったり、怒りっぽくなるなど、性格が変わったな…と思われる場合は要注意ですね。

 軽度なアルツハイマー病はある程度、自分で取り繕うことができます。なので、自分の業界や会社について人から聞かれると、一見、まともな回答ができるのです。ところが、「そういえば、今度のアメリカの大統領は…」などと、急に違った質問をしたりすると「君は何を言っているんだ」とキレて怒り出したりします。