一方で、世紀の大合併と言われたダイムラークライスラーの誕生だが、結局数年で離婚し、クライスラーは伊フィアット傘下に入っている。米GM、フォードは90年代に復活したが、2008年のリーマンショックで経営破綻状況となり、オバマ政権の救済によりGMが国有企業化され、フォードは自主再建を果たした。その後GMは国有企業を脱して再度復活、フォードも自主再建が軌道に乗り、現在に至っている。

 日本車各社も、ルノー日産連合という枠組みに代表されるように、新たなグループ化も展開されるなかで、現在は乗用車8社、トラック4社という体制になっている。日本車にとって米国市場は、世界最大市場の座を中国に譲ったとはいえ、グローバル戦略においては中国に次ぐ重要な市場である。トヨタ、ホンダ、日産、スバル、マツダなどにとって、北米市場での収益は大きなウェイトを占める。

 米自動車市場は、近年のシェールガス供給も含めて原油が安定化するなど、好調な動きを示しており、大型SUVの復活なども目覚ましい。三菱自工だけが米工場から撤退したが、日本車各社は米現地化やNAFTAを活用したメキシコ現地化を通じて、米市場における市民権を浸透させてきている。

 したがって、一部日本からの輸出はあるものの、大半は現地生産による米市場への供給となっている。日本車は米市場で約40%を占めているが、現地化がほとんどであり、実は米国の雇用に大きく寄与しているのだ。

TPPを破棄しようとする
トランプの主張には無理がある

 TPPについては、日米ほか12ヵ国の拡大貿易協定という性質上、メリットとデメリットの双方を指摘する声はある。日本においては、自国産業の農業が大きなダメージを被りかねないといった不安から、いまだ反対の声が根強いことも確かだ。自動車に関しては、米国の乗用車関税が2.5%なのに対して日本はゼロ、カナダは6.1%、EUは10%となっている。

 日本の自動車産業としては、このTPPによって産業の競争力が向上すること、カナダなどの完成車関税が撤廃されることで輸出の拡大につながること、米国部品関税の撤廃で現地生産のコストを低減できることなどへの期待がある。自動車に関する大筋の合意では、米国の乗用車関税2.5%が発効から約25年維持され、一方で米国への輸出部品のうち8割の品目の関税は即時撤廃されるという、政治的な取り決めがなされている。いずれにしても、これらは議案として米議会に委ねられているので、トランプ氏の「国家主権を破壊する」という主張だけで合意を破棄することには無理がありそうだ。