第2は、運転特性や様々な情報を蓄積することによって、将来は膨大なデータを活用できる可能性があるが、これはソニー本体の情報・通信、デバイス技術とシナジー効果が期待できる(もちろんデータには走行場所等の個人情報が含まれるため、プライバシーの問題を解決することが必要であるが)。

 第3は、大手企業がすぐには追随しにくく、先行者利益を上げられる可能性がある。大手企業が追随しにくい理由は主に2つある。

(i)市場規模が小さい

 この市場が、大手企業が相手にするほど大きくないということである。それ故に固定費の高い大手損保が参入すると、利益率の低下を招く可能性がある。

(ii)規模の経済性が効かなくなる

 大手の損保会社にとっては、運転技術という新しい保険料決定要因を加えず、年齢などの顧客属性と等級を中心とした従来のやり方の方が、募集コストが安く、規模の経済性をそのまま享受することができる。

 第4は、優良顧客がリテンションされる仕組みである。同保険は毎年優良顧客が累積的にソニー損保に蓄積されていく仕組みであり、それによってソニー損保の支払い保険金は減り、収益は増えていく。一方で、仮に全国の優良ドライバーがすべてソニー損保に乗り換えたとすると、他社の加入者は“不良ドライバー”だけ残ることになり、保険料収入の低下以上に、事故による保険金の支払いは増加し、経営を圧迫することになる。その結果、大手は保険料を上げざるを得ないという事態も予想される。

 第5は、「やさしい運転キャッシュバック」が普及するに連れ、ドライバーが急加速・急減速を避けるようになり、これによって、交通事故を減らす効果がある。ちなみに英国では、17~21歳のテレマティクス保険加入者の事故率が、75%も低下したという事例も報告もされている。

 そして第6に、やさしい運転は事故が減るだけでなく、急発進・急加速などが減ることにより、消費者にとっては燃費の向上、社会全体にとっては環境負荷の低減につながるという効用もある。

短期、中期、長期で見た
テレマティクス保険の将来は?

 では、ソニー損保のような企業が手がけるテレマティクス保険は今後、どうなるのか。短期・中期・長期の視点から考えてみよう。