筆者 問題が未解決のまま、残ったことになりますね。

加藤 不幸な人がいつまでも不幸であるのは、そこに理由があります。大切なのは、現実の正しい把握なのです。

人の最大の財産は、素直さ
「どうせ俺は……」では不幸のまま

筆者 確かに、「私は東大卒ではないから、役員になれない」と話す人は、自らの問題点と向き合っていないように見えます。

加藤 見えるものを持ち出し、自分や周囲を納得させようとすると、原因のすり替えをすることになります。その1つが学歴です。役員になることができないのは学歴が原因である場合もあるかもしれませんが、事実関係として正しくないこともあるわけです。そのあたりは、きちんと見定める必要があります。

 原因のすり替えは怖いです。通常、目に見えないことに原因をすり替えることは、まずありません。ほとんどは、見えることにすり替えるものです。見えることに原因をすり替えたとき、人は納得する傾向があります。それが本当の場合もあるのですが、嘘の場合もあるわけです。

筆者 日本では、嘘みたいなものを信じ込んでいる人が多いのかもしれませんね。

加藤 多いですよ。せっかくの才能や、開花される機会を失っている人が多い。この人が素直だったら、潜在的な才能が開花して、素晴らしい人生になるのに、と思う人はたくさんいます。人の財産は、素直さだと私は思いますね。そんな素直さがなく、「どうせ俺は……」と言われると、周囲もあの人のために力を貸してやろうという気にはならなくなるわけです。

「どうせ、俺は学歴がないから……」と目に見えるものに置き換えれば、確かに精神的には楽ですね。自分とは向かい合わないわけだから……。

筆者 確かに、そのとおりだと思います。

加藤 自分に欠けているものが、自分の幸せにとって決定的に意味を持つと解釈するのは、うつ病の人に見られる解釈の仕方と似ているのです。アメリカの精神科医であり、心理学者であるアーロン・ベックは、著書『Depression』(デプレッション)の中でこう指摘しています。

 うつ病の人は、自分に欠けているものが、自らの幸せによってエッセンシャルだと捉える傾向がある、と――。つまり、その欠けているものがあると、幸福にはなれないということです。