気のない返事をすると、逃げるように寝室へ行ってしまった。

(あなたは良くても、私は困るのよ!)

 フローリングの床を、ペタペタと裸足で歩く正雄さん。歩いた跡に、水虫の菌が点々と付着していることを想像すると、真理子さんは気持ちが悪くなった。

医者嫌いで無知な夫が
水虫の菌をばら撒く

 それにしても、「夫」という人種はどうして、揃いも揃って医者が嫌いなんだろう、と真理子さんは思う。

 実家の父も、祖父もそうだった。

 既婚の友人たちの夫も、病院嫌いが多いらしい。

 筋肉痛程度の痛みでも大騒ぎするくせに、病院には行かない。単に心配して欲しいだけなんじゃないか?

「女性はさ、毎月月経で血を見ているし、出産があるから、出血や痛みに強いんだよ。男はダメだね。ガサツそうに見えて、繊細なの。検査で大病なんか見つかったら、告知された途端にショック死するかもしれないよ」

 なんやかやと理屈をつけて、受診を先延ばしするうちに手遅れとなり、父は数年前、ある大病で亡くなった。

 むろん、水虫で死ぬことはないが、「ノーベル賞がもらえる」なんて、いつの時代の話?

 水虫はとっくに治る病気になっているのに治らないのは、正雄さんのような無知な夫が、家庭中に菌をばら撒いているからに違いない。しっかり治したはずなのに3年連続で再発しているのは、正雄さんに移されるからなのだ。どうして「同じ日」に再発してしまうのかはミステリーのままだけれど。

悶々と悩む真理子さん。

 とはいえ、自分が水虫になったことは、夫には内緒だ。