「夜眠れない」「仕事に集中できない」ほど
足のムズムズに悩まされるKさん(39歳)

湘南新宿ライン開通で
自分の故郷・栃木県が通勤圏に

 自宅のある栃木県から、新宿新都心の高層ビルのオフィスに通うKさん(39歳)。以前は、故郷の栃木から新宿まで通勤できるとは夢にも思っていなかった。大学に入学してからずっと阿佐ヶ谷で1人暮らし、結婚しても杉並の社宅から通勤を続けていた。しかし数年前に湘南新宿ラインが開通して状況が変わった。故郷の栃木がいきなり通勤圏になったのだ。

 Kさんの高校の同級生のうち何人かは、栃木に戻り家を建て、故郷から通勤している。Kさんも昨夏、杉並の社宅を出て、故郷の宇都宮郊外に一戸建てを建てて引っ越しをした。

 いずれ両親が歳をとり、長男である自分が面倒をみることになるだろう。そうした場合は、近くに住んでいたほうが何かと都合がよい。しかも、今は元気な両親に子供を預けて、妻が働きに出ることもできる。都心に住み続けていれば、娘は保育園に預けることもできない“待機児童”のままだ。

 「早起き」の習慣がつけば、遠距離通勤もそれほど苦にならないとKさんは思った。毎朝、司馬遼太郎を読みながら通勤している。たまたまキオスクで買った「竜馬がゆく」を読んで以来、司馬遼太郎の歴史小説の面白さにはまり、通勤時間で、幕末ものはすべて制覇した。今は戦国ものにトライ中だ。

冬になるとあまりの寒さに
布団から出ることができない

 郊外の一戸建てライフは、Kさんの週末の過ごし方を大きく変えた。小さな庭に家庭菜園を作り、トマト、きゅうり、ピーマン、ゴーヤを育てた。夏の間、面白いほどたくさん収穫することができた。

 ホームセンターで買ってきた苗を庭に植えているだけで、どんどん育つ。菜園の傍ら、娘との散歩をしながら、虫や鳥、植物の名前を覚えていくのも楽しい。秋から冬になると白菜などの青菜がよくとれた。

 しかし秋が深まってくると、大きな問題が生まれていた。都心の集合住宅と宇都宮郊外の一戸建てでは、あまりにも温度が違うのだ。日光連山から吹き下ろす北風が家を直撃して、その北風が寒くてたまらない。朝は寒さで布団から出ることができない。