1979年に出版した「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が世界的ベストセラーとなり、日本研究家として名を馳せたエズラ・ヴォーゲル氏。その子息であるスティーヴン・ヴォーゲル・カリフォルニア大学教授もまた日本の政治経済研究の第一人者として知られる。その生まれながらのジャパンウォッチャーの眼に、経済規模で中国に抜かれジャパン・アズ・ナンバースリーに転落した日本の姿はどう映っているのだろうか。ヴォーゲル氏の専門分野である安全保障問題を中心に、日本の課題を聞いた。(聞き手/ジャーナリスト、矢部 武)

――民主党代表選でもしも菅直人首相が敗れ、小沢一郎首相が誕生したら、米国はどう対応するか。

Steven Vogel (スティーヴン・ヴォーゲル)
カリフォルニア大学バークレー校政治学教授。先進工業国の政治経済が専門。日本の政治、比較政治経済、産業政策、防衛などに関する著作多数。1998年には大平正芳記念賞を受賞。日本で英字紙記者として働いた経験もあり、日本語に堪能。1979年に出版され、世界的ベストセラーとなった『ジャパン・アズ・ナンバーワン』の著者、エズラ・ヴォーゲル氏は実父。

  日本の首相が代わっても米国はそれほど困らないだろう。しかし、日本や民主党のためにどうなのかは疑問だ。

 民主党政権はそろそろ本気で政策に取り組むべきで、トップの顔を変えている時ではないと思う。(仮にそのようなことが再び起こるようならば)、それは民主党の大きな失態だ。

 オバマ政権と日本の政権交代とを比較してどこかどう違うかというと、日本では政治的構造は変わったが政策はあまり変わっていない。一方、オバマ政権ではすぐに政策を変えたが、政治的構造はそれほど変わっていない。オバマ政権の2年間をみると、医療保険改革や金融制度改革など多くの政策転換を行った。

 日本の場合は政権交代がずっとなかったので、政権交代しただけで政治のやり方は変わった。しかし中身の政策をみると、オバマ政権と比較したら、日本の民主党政権はあまり成果を上げられていない。“官僚叩き”をやって、事業仕分けとか事務次官会議を廃止するとかそういうことばかりに力を入れているが、経済対策など重要な問題はなおざりにしている。