貧困と格差に揺れる欧米社会
アベノミクスにも見える不安
英国の国民投票ではEU離脱という結果が出た。この驚きの結果の背景には、通常の人々が豊かになったという実感を持てないという現実と、一部のエリート層への反発があるという。まさに、貧困と格差の2つである。
一方わが国では、7月10日の投票に向けて参議院選挙が始まっているが、盛り上がりに欠けている。テレビ討論などを見ても、議論は揚げ足取りに終始し、具体的な政策の中身の議論に入っていかない。その理由は、最大野党の民進党に具体的な政策がなく、自民党との対立軸がつくれない点にある。
「調子が悪いので、病院で診察を受け、処方箋に基づいて薬を3年以上飲み続けたがほとんど効果がない。効果がないどころか、他の場所も痛み始めた」
我々がこんなケースに遭遇すると、「処方箋が間違っていたので、他の医者に診てもらって新たな治療法や薬を処方してもらおう」と考えるのが常識だ。
長く続いたデフレ脱却への処方箋は、「異次元の金融緩和」と「補正予算等の財政追加政策」(と経済成長戦略)であったが、それから3年経っても一向に効果は上がらない。
これは、「リフレ政策という処方箋が間違っている」と考えることが常識だ。
現に、日銀のマイナス金利政策は、円レートや株式市場に何ら効果がないばかりか、一般国民の不安を煽り、消費マインドを冷却化させている。1700兆円のわが国金融資産の行き場を失わせ、経済はますます縮こまってしまった。
このように、わが国の経済政策(処方箋)には過ちがあるわけで、今回の選挙は、それに代わる具体的な処方箋を議論する絶好のチャンスである。とりわけ、前回の衆議院選と異なり、現在国民の半数は、アベノミクスへの不信感を抱いているのだから。
具体的にはどういうことか。
まずは、「リフレ政策」が間違った処方箋であることをわかりやすく論理的に説明する。その上で、グランドビジョンに基づく新たな処方箋を打ち出す。それは、「金融緩和・財政追加によるデフレ脱却」ではなく、「所得の再分配の強化を通じた構造改革・経済活性化」だ。
冒頭で述べたように、先進世界の経済社会は、グローバル経済のもとで、格差貧困問題に直面している。それに移民問題が加わり、英国のEU離脱やトランプ現象など想定外の新たな局面に突入している。