7月10日の参院選投開票まで、残り10日を切った。選挙に先立ち、自民党の安倍総裁は「自公で過半数を獲る」との目標を掲げているが、党内では「自民単独での過半数を」との声も上がっている。果たして、与野党それぞれの実質的な「勝敗ライン」とはどこにあるのか。政界の動向に詳しいジャーナリストの鈴木哲夫氏に聞いた。
自民に内在する3つの勝敗ライン
焦点となるのは“憲法改正”
各党、様々な思惑がせめぎあう参院選の勝敗ラインだが、もっとも気になるのは与党である自民党の設定値。鈴木氏によると、自民には3つの勝敗ラインが存在しているという。
「まず1つ目は、安倍首相が公言している『自公での過半数』。しかしこの勝敗ラインには、大きな問題点があります。3年に1度の参院選は定数242名のうち、毎回、半分の121名しか改選されないのですが、安倍首相が掲げているのは、その『改選121名の過半数』なのです。法案を通すためには非改選の議席も含め、参議院全体で過半数を占める必要があるのに、改選される121名だけで過半数をとっても意味がない。明らかに勝敗ラインを低く見積もっています」
鈴木氏によれば、「この設定値は選挙結果が責任問題にならないようにまずは低くしているという狙いがあるのでは」とのこと。
安倍首相も党首として、また、自身の進退がかかっている以上「迂闊なことは述べたくない」というのが本音だろう。
「2つ目の勝敗ラインは『自民の単独過半数』。参議院では現在、自公で過半数である135議席を占めていますが、自民単独ではやや足りない。この状態では、法案を通すために公明党に気を使ったり、彼らの提示する条件を飲まざるを得ないケースが出てきてしまいます。そんなふうに公明党の意向を気にせずに議会運営をするためには、今度の選挙で自民党は『57議席』を獲得する必要があるんですね。そうすれば単独で過半数に届きます」