英国のEU離脱の影響が大きいのは、株価や為替だけではない。進出している日本企業にとっても頭の痛い問題。多くの企業がEU市場全体を攻略する拠点として英国を選択しているからだ。

 今回の英国のEU(欧州連合)離脱選択は、日本企業にも暗い影を落とす。というのも、英国企業を買収したり、EU市場攻略の拠点を英国に据えている企業も多いからだ。東京商工リサーチらの調査によると、英国に進出している日系企業は343社、759拠点にもなる。

 中でも、影響が大きいのは日立製作所だ。同社は、鉄道事業の本社を英国に設置していて、2015年秋には、英国の工場を稼働させ始めたばかり。18年度までの中期経営計画では、日立グループ全体の売上高は10兆円で横ばいを想定するのに対して、鉄道事業は、18年度に81%増の6400億円を見込んでいる。つまり、日立全体をけん引する事業という位置付けなのだ。

日立グループ全体のけん引役を担う鉄道事業は英国を本拠地としているため影響が大きい。Photo:朝日新聞社/Getty Images

 実際、英国には鉄道事業中心に5000人を擁していて、イタリアの鉄道会社の買収や、英国運輸省との契約、スコットランドの案件の受注など、すでに順調に推移していた。しかし、今後は目算が狂いそうだ。

 というのも、鉄道事業の拡大戦略は、鉄道の敷設と更新が進む欧州の需要を取り込むことを核としていて、その実現のために、英国の工場から欧州全体に輸出することを想定していた。離脱により関税がかかるようになり、思い描いたように鉄道事業の計画が進まなければ、グループ全体の中期経営計画の修正すら余儀なくされるだろう。

 鉄道事業だけではない。日立傘下の英国の原子力事業会社ホライズンは、英国西部で原子力発電所2基を建設する計画で、政府の許認可のスケジュールでは最終段階にあった。17年にも許可が下り、19年ごろには着工の予定だったが、キャメロン首相の退任で許認可がずれ込む可能性もある。

 このような英国依存の状況にあるため、東原敏昭社長は以前から、「EUの一員であるから、英国に工場を造ってきた。離脱には絶対反対」と表明してきた。

 日立は離脱に関して「事業への影響を慎重に評価して対応を検討する」とのみコメントしているが、修正をせまられることは間違いないだろう。