医師が突然笑い出した理由
3年連続で同じ日に水虫受診
極細のピンセットで摘み取った患部の皮膚を、無言で観察していた医師は、つぶやいた。
「うん、やっぱり水虫ですね」
そして、カルテに目を落とすと、今度はいきなり大声で笑い出した。
「ビンゴですよ~(笑) あなた去年も一昨年も、今日と同じ日に水虫で来院していますね。不思議だなぁ、なんか水虫が発症するようなことしているのかな。心当たりはありますか?」
そんなルーティン、あるはずない。
薬の塗り方を指導され、処方箋をもらった真理子さん(仮名・39歳)は、憮然とした顔で皮膚科を後にした。生まれて初めて水虫になったのが3年前。以来今年までの6月の行動を、懸命に思い出しながら。
「白癬菌がいるよと君が言ったから、6月20日は水虫記念日ってか。う~ん、切ない。でもちょっとミステリーだわ」
真っ先の心当たりは夫
あなたは良くても私が困る
真っ先に浮かんだ「心当たり」は、一週間ほど前の夫・正雄さん(仮名・45歳)とのやりとりだった。
正雄さんは長年の水虫持ちで、毎年、梅雨入りのニュースが聞かれる頃になるとリビングの床に座り込み、足指の股のところに治療薬を塗り始める。
「また水虫?今年こそ皮膚科に行って、ちゃんと治してちょうだいね」
真理子さんが勧めると「そうだね、でも俺忙しいからさぁ。水虫ぐらいで病院に行くのは面倒なんだよね。それに結局毎年再発するじゃない。昔から、『風邪の特効薬と男性型脱毛の特効薬と水虫の特効薬、どれかを開発したらノーベル賞がもらえる』って聞くよ。どうせ治らないよ」