もっとも、08年に東証1部に上場したこともあり、同社関係者は「みずほ銀行系」と呼ばれることを極端に嫌う。確かに独自の工夫を重ね、老朽化した建物は順次建て直し、用途も大胆に変えてバリューアップを図ってきた。

 例えば、アパレルのGAPが入居する「ヒューリック銀座数寄屋橋ビル」は、旧来の銀行店舗ビルを、美しい外観を持つ最新鋭のビルに生まれ変わらせ、賃料の大幅引き上げを可能にした。外国人観光客に人気の東京・浅草のホテル「ザ・ゲートホテル雷門」も、元は旧富士の雷門支店だ。

 他にも、都内の高級住宅街にある旧銀行社宅は、高齢者向け施設に改装している。

 そうした手堅いビジネスを手掛けてきたヒューリックだが、ここ最近はアグレッシブな手を次々と繰り出している。

ここ最近はホテルの取得が目立つ

 昨年4月には、15~18年12月期の4カ年で約8000億円の設備投資をするために、約800億円の公募増資を実施。自己資本比率を28.6%へと高めつつ、総有利子負債は6582億円へと、ここ5年で倍増させた。

 目指すのは、23年12月期の経常利益を倍の850億円にするという野心的な数値だ。株式時価総額と並んで、こちらも財閥系大手3社に次ぐ規模。ただし、これまでの好業績は旧富士の資産を存分に生かすことで実現してきたが、今後は、新たに取得する物件で同様の収益を上げねばならない。

 その第1弾が、昨年11月にみずほ信託銀行と共同で買収した、不動産投資会社シンプレクス・インベストメント・アドバイザーズだ。それに伴いシンプレクスが保有していたオフィスビルや、東京ディズニーリゾートに近い「東京ベイ舞浜ホテル」を取得した。結果、設備投資額はこの年、一気に3000億円近くに膨らんだ(図(4))。

 それだけではない。今年に入ってからは、静岡県熱海市の高級旅館「ATAMI海峯楼」や、取得額600億円ともいわれるお台場の高級ホテル「ホテル グランパシフィック LE DAIBA(現グランドニッコー東京 台場)」を相次いで取得した。

 だが、インバウンド需要に左右されるホテルビジネスはリスクが大きい。オフィスビルの新規取得も続いているが「不動産市場の高騰の折、高値つかみは避けられない」(ある不動産アナリスト)。

 ましてや足元では、不動産市場のピークアウトがささやかれており、収益環境はこの先、不透明だ。保有不動産の含み益も、10~12年12月期は500億円強で推移していたが、15年12月期は2200億円と4倍に増えた。だが、市況の悪化で目減りすれば、業界4位に上り詰めた株式時価総額も下落しかねない。

 旧みずほ銀行副頭取から06年に社長に就任、現在のヒューリックの地位を築いたとして、西浦三郎会長の評価は高い。足元の好決算を持続的なものにできるのか、今年3月に就任した吉留学社長の手腕が問われることになる。